公益財団法人 禅文化研究所

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調査研究

オウム真理教問題研究会 第2回研究会

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角田禅堂(新潟)堂長・上松宗忠氏の話

自己の運命というものに対する強い関心から求道を志し、オウム真理教についても詳しい角田禅堂堂長の上松宗忠氏を講師に招いて、氏の求道の歩みとオウム真理教が説く「解脱」の修行階梯ならびに教義についての話を聴き、話の後、構成員の質疑に応答してもらいながら研究討議を進めた。

オウム真理教についての氏の話で印象深かった点は、オウム教団が密教の教えを比較的忠実に実践している面をもちながら、指導者の麻原彰晃自身が自らの説く最終修行階梯・マハームドラー(大死)を実地体得しておらず、ただ理屈のみで体得したものと思い込む一方、弟子らには死して自分の命令に服することをその修行として課すという錯誤をなし、以て自ら妄想の世界に落ち込んだ、という指摘であった。オウム真理教に関する質疑応答で問題となった事柄は、薬物の使用によって短期間に修行階梯を進ましめうると考えた修行というものそのものについての基本的な誤解、ならびに修行中に抱き見る種々の幻想および虚像をあたかも解脱に近づく階梯のごとく見做して自らも追いかけ、信者にも追いかけさせて、ついにその立場を脱しえぬ修行の目的についての基本的な誤解、また、出家を勧誘しては教団に対する布施を強要するなど出家および布施行の意味の歪曲などであった。

このような質疑応答を通して、オウム教団に何か真実なものを求めていま路頭に迷っている“一般信者たち”に、「われわれ」が何らかの方法で手を差しのべられないかという点に討議の中心は移って行った。しかし、オウム信者に対して一般社会人が抱いている恐怖心と強い批判・反発という問題を一方に見ながら、檀家制度に依存している各寺院の現状および寺院住職の問題意識ならびに各教団そのものの現在の体質および体制を考えるとき、臨黄の各教団が教団として「受け入れるべき」ことを提唱してその体制をとることは非常に困難であり、まして、臨黄教団全体が一致してこれを提唱推進することは不可能であるという現状分析がなされた。そして、各宗門人が禅僧として「何かせねばならぬ」とひそかに感じつつも、何もなしえぬ自らの、また教団の実状と実体とを直視させられているこの事実こそ、まさに「オウム事件」が「われわれ」に突きつけた「われわれの問題」であることを先ず認識し、その上で、かかる実状にある「われわれ」のためにも何らかの方途を見出だすべく努力することに意見の一致をみた。