トゥルク ジャミヤング リンポチェ来日講演記録


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チベット仏教寺院にて_ブータン

先日よりこちらでご案内させていただいております、チベット仏教僧・トゥルク ジャミヤング リンポチェ(リンポチェとは、「大いなる価値」という意味で、人に対する場合は「高貴なるお方」となり、尊称であります)の講演内容についてをご紹介させていただきたいと思います。
私が一番心に残っているのは、リンポチェが御自身の胸のあたりを手で指しながら、宗教にしても何にしても、「自身のdarumaに合うものを探しなさい」と仰った事です。
darumaというと、「仏法」などと訳される事が多いのですが、リンポチェは「nature」と仰っていました。
「自身のnatureに合うものを」というお言葉から、如何にリンポチェが一人一人の“存在”を尊いものとしてお考えであるか、また、それぞれが現世で生きる意義を見出し、本当の幸せとは何であるかを考え、より良い生き方をする事を望まれているかが伝わってきました。
私自身、茶の湯の稽古をし、禅に惹かれ、禅文化研究所で働かせていただいていますが、まだまだその他に自身のnatureに合うものとは一体何であるか、日々模索中です。
人生は、自身で“これだ”と思うものに如何に多く出会うかの旅路であると思っている私にとっては、とても心に響く言葉となりました。
また、ある方がリンポチェに、「あなたが今日ここで話した事は、既に色々なメディアで言われている事であって、知っている事ばかりで、私はがっかりしました」と言ってのけました(驚愕しながらも、リンポチェのお答えが楽しみだった私…)。
するとリンポチェは、、、


「あなたは“知っている”だけであって、それは“気づき”とは全く別のものです」と。
「私はこんなにも、これだけの事を知っているのだ!!!」と思い、生きてゆく事は、自身を低いステージに停滞させたままになってしまう…とも。
私もそうですが、皆さんも頭でっかちになってはいないでしょうか?!
講演が始まる前に、リンポチェは「大きな期待をしない事」と私達を戒めましたが、誰かに会ったり何かを体験して、世界がぐるりと輝かしく変わる!などという大きな期待をするのではなく、自身に“気づき”が訪れるまで、地道にコツコツと歩み、努力をする事を忘れるなという事も仰っていました(もちろん、人生が一変する体験というのも中にはあるとは思いますが…)。
人は苦しみなどに心が支配されると、劇的に自分を取り巻く環境が変わる事を望み、もがきますが、苦しさをも受け入れ、着実に歩む尊さを教えられた気がしました。
とてもシンプルでわかりやすく、ストンと自分の中に入って来るお話ばかりで、だからこそ胸の奥底に温かいままにその教えは残っています。
私事ですが、身内に不幸があり、その事を私の友人から聞かされていたリンポチェが、「亡くなられた方の為に祈りました」と仰った事にはとても驚き、ありがたく、また、とてもシンプルに“生と死”というものについての受け止め方をお話下さり、どれだけ心癒されたか知れません。本当に有難い御縁でした。
また来日講演がある際は、お知らせしたいと思います。


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