人生の一つの生きがい・楽しみに、“成長を見守るよろこび”というものがあると思います。それはもう多種多様で、ある人にはお子さんの成長であったり、またある人には、畑で育てている野菜の成長であったり…。
先日、バロックザール-青山音楽記念館-にて開催された、英国王立音楽大学の大学院にて勉強中の若い2人、谷本綾香さん(メゾソプラノ)と、田代裕貴くん(ヴァイオリン・ヴィオラ)のデュオ、V-SQUAREDによる、財団法人青山財団助成公演 V-SQUARED NEW YEAR’S CONCERT(ピアノ伴奏/小川春香さん)にお邪魔してきました。
静寂の中、ヴァイオリンの美しい音色が響いた瞬間に、本物に直に触れる悦びと感動が全身に溢れ、さらに、個人的意見ですが、どの楽器よりも最も尊いと思う“人の声”には、どうしようもないくらいの感情の高ぶりがあり、とめどなく溢れる涙を止める事ができませんでした。
自身が持つ醜く汚いドロドロとした部分。人間なら誰しも持ち合わせているものかと思いますが(いえ、そうでない方もいらっしゃるでしょうが私は持っています……)、芸術とは、そういったものを浄化する為に存在するのか…と思わざるを得ないのでした。涙しながら、色々なモノが綺麗に流されてゆくようでした。
しかしながら、そうして一旦は流されていっても、日々の生活を続けてゆく中で、どうしても心に塵や埃はたまるもので、それ故に、常に美しいものを求め続けるのでしょうか。人間の生活に、如何に芸術が必要か、如何に大切なものかを改めて知る事のできた一日でした。
さて、三十歳を少し超えると、最近出逢う様々な職人や作家、音楽家などが、同じ年くらいであったり、年下であったりする事が増えてきました。
その道の大家と言われる人々に触れる事ももちろん素晴らしい経験ですが、上記のような若い方達が、これからの様々な人生経験により、“表現”というものがどのように変化してゆくのかを見守るのも、一凡人の私としては、人生を彩りあるものにしてくれる悦びであり、“成長を見守るよろこび”であるなぁ…と思った次第。
人生の楽しみがまた一つ増えました。
彼等の成長から、私は今後も様々な事を学ばせてもらう事になるでしょう。
次回帰国時のコンサートが、今から楽しみです(こちらでもお知らせ致します)。
音楽に関しては何ら専門知識も無く、昔は1つ2つ楽器を習ってはいましたが、全く駄目で挫折した私ですので、若くとも専門家である彼等を「見守る」などという言葉を使うのはどうかとも思うのです…。
が、茶の湯や禅の世界に深く傾倒し学んで来た事が、今になって、音楽への理解にも繋がっている気がしています。
あまりによく言われている事ですので今更ですが、たくさんの本物に触れる事は、人生をより豊かにします。
バロックザールでは、様々なコンサートが企画されている模様。チケットの値段も手ごろです。是非みなさまもおでかけになってみて下さい。
長くなりましたが最後に…、メゾソプラノ・谷本綾香さんのお父様は私も大ファンの伊賀焼の陶芸家、谷本洋さん。2月13日まで、瀬戸市の新世紀工芸館展示棟にて、展観が開催中です。お近くの方は是非おでかけ下さい。
お母様のあけみさんも陶芸をされていて、私は洋さん、あけみさんの作品にも、生活の中で潤いを与えてもらっています。
専門は違えど、ご両親と同じ道をゆかれているのだなぁ……と私の中では繋がっている素敵なご家族です。