東京方面への出張中、時間に恵まれたので、東京国立博物館で開かれている特別展 「仏像 一木にこめられた祈り」を鑑賞してきた。
この仏像展の情報は、関西でもポスターやテレビでの情報を見かけたこともあるからだが、実は、数多い観音様の仏像の中で私が一番美しいと思っている、滋賀県の高月町にある渡岸寺観音堂(向源寺) の十一面観音様が、この仏像展に出展されているからなのである。因みに、渡岸寺は、「どうがんじ」と読む。
本当は私だけではなく、国宝に指定されている十一面観音の中でも、もっとも美しいとされているのであって、かの井上靖さんもその著書『星と祭』でこの観音様のことを書かれているらしい。さっそく読んでみなくては……。
通りかかったら必ず立ち寄るようにしている渡岸寺の観音さんであるが、10月ごろであったか、たまたまお参りすると、近々、東京の展覧会に門外不出であった観音様を出品するので、しばらくお留守になるというお知らせが貼られていた。
これは一大事。過去には戦乱の焼き討ちに遭いそうなときにのみ、信仰篤い村人によって、寺から出されて田畑の土中に埋められ、戦火から逃れてこられたこの仏像、それ以外は門外不出の国宝である。
私個人の気持ちで言えば、わざわざ東京なんぞにお出ましにならなくても、知る人ぞ知る美しい仏像として、ひっそりと湖北の寺に佇んでいていただければいいと思うのであるが・・・。
平日の夕方だというのに、それは驚くほどの混雑であった。
今回の仏像展は一木から掘り出された仏像ばかりであったが、我が渡岸寺十一面観音様は、メインとなる場所に出展されており、多くの人がその回りを取り囲んで見ていた。
普段は小さなお堂で十人ほどの人に囲まれているだけなのだが、こんなに多くの人に囲まれて、さぞかし恥ずかしかろうと、渡岸寺観音様の追っかけのような私は思うのだった。
しかし、せっかくの好機会であるし、関東方面の方は、是非、ご自身の眼でどれほど美しいかをご覧あれ。