暑い日だったが大変な人出で、かつてのおかげ参りもかくや思うばかりであった。いつもこんな感じなのだろうか。さすがお伊勢さんといったところだ。
昔聞いた話では、半ズボンで社域に進入すると神主さんや衛士さんに注意されたというが、暑い盛りかハーフパンツの大人や子供も多い。ごく軽装の女の人も結構いる。ドレスコードが緩くなったのか、暑い日は黙認なのか、それともあの話はウソだったのか。
周りを見ると、鳥居の前で一礼したり、手水を作法通りに使ったり、二礼二拍手一礼をきちんと守っている人が意外と多い。感心しながら見ていると、見慣れない光景に出会った。参拝者が賽銭箱の前で行儀よく二列に並んで拝礼の順番を待っている。まるで駅で列車を待つ乗客のようだ。日本人の秩序意識を象徴するかのような光景だが、昔からの作法なのか、近頃できたものなのかは知らない。
ともあれ、わたしも他の参拝者と同様に皇祖大神の宝前にぬかづいて和光同塵の神恩を謝し、敬神尊皇の微衷を捧げたことは言うまでもない。
正殿から荒祭宮の方に足を向けると、途中の大木にちょっとした人だかりができている。ははあ、これが今はやりの何とかスポットというものかとピンと来た。みなさん神妙な面持ちで木に手を触れたり、シャッターを切ったりしている。どんな効果があるのか知らないが、木の方は多くの人に触れられた効果によってテカテカに光っていた。