『土を喰う日々-わが精進十二ヶ月-』 水上勉 -職員オススメ本-


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幼少期を相国寺の塔頭や等持院にて過ごした事でも知られる作家、水上勉氏の、『土を喰う日々-わが精進十二ヶ月』(新潮文庫)を、その季節ごとに読み進めています。
季節ごとの自然からのめぐみ、そのめぐみに対する我々人間の在り方というものを、典座(台所の意・寺院にて炊事を掌る役の事もいう)でのしごとを通して、老師からの教訓も交えて書かれている為、非常に尊い教えを学ばせていただいています。
他の命をいただかなければ生命を維持する事のできない私たちが、“無駄にしない。ムリな調理はせずに、その素材の良さを存分に生かし引き出す事”を禅寺の典座から知る事は、飽食の時代、地球環境の危機が叫ばれる近年において、もう一度私達が生き方を足元から見直す為に、非常に重要な教えが含まれているのだと思います。
また、書名の『土を喰う…』からは、“身土不二”と言われるように、我々の心と身体を養う為にどれほどに大地が、食べ物が大切かを思うと、原子力発電に頼る世界、大地を汚してまでも我々の便利と快適を追究しようとする世界が、如何に愚かであるかを教えてくれています。
先月来日されたブータン国王が、国会での演説において、我々日本人の持つ素晴らしい資質というものを、我々が知り得る(自覚している)以上に的確に暖かく示して下さりました。
その原点というのは、知らず知らずのうちに、神道や仏教の考え方、智恵などによって育まれているものなのだろうと思うのです。
“宗教”と言ってしまうと拒絶反応をおこす日本人が多いような気がしますが、禅から学ぶという事は、自然の営みから学ぶところと深く共通する所があります。そういった禅の“本質”ともいうべきところを、生き方の手本とする事は、万人の助けとなる事と思います。
道元禅師の『典座教訓』は言うまでもなく素晴らしいのですが、ちょっととっつきにくい、難しそう……と尻込みしてしまう方も多いかと思います。そんな方や、禅には興味がなくとも、お料理好きな方には是非この本を!
もちろん、禅に関心があるという方にも、禅語の本を読むのも良いのですが、こちらもまた、オススメしたい一冊なのです。