『大愚和尚語録・拾遺・行実』 訓注・能仁晃道


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平成24年7月10日、禅文化研究所発行。できたばかりの本書を今日入手することができた。訓注は能仁晃道師である。「愚堂東寔」「雲居希膺」「大愚宗築」の三禅師を能仁さんは、「江戸前期の三大禅匠」と呼ぶ。彼らは「青年のころは行脚修行を共にし、大法なってからは、愚堂禅師は妙心寺に三住して一派の重鎮的存在となり、雲居禅師は松島瑞巌寺を中興し、道歌集『往生要歌』をもって庶民教化に勉め、大愚禅師はいわゆる〈大愚派三十六刹〉を開山中興して臨済禅の挙揚に励んだ」禅匠たちだ。
上記の愚堂禅師の語録は、三百五十年遠諱を記念して、平成22年10月(遠諱事務局刊行)に、雲居禅師の語録は、同じく三百五十年遠諱を記念して、平成20年9月(松島瑞巌寺刊行)に、いずれも能仁さんの訓注で出ている。
大愚禅師の三百五十年遠諱は、6年後である。能仁さんは、尊崇するこの三禅師の語録訓注を、是非自らの手で仕上げたいと念じていた。このたび、三百五十年遠諱を待たずに完成した『大愚語録』訓注の発行を研究所が即断したのは至極当然のことであった。
能仁さんの仕事は実に手堅い。編集作業の折、能仁さんの手がけた本を参考にさせて頂くことがよくあるが、いつも「大船に乗った」心持ちで、テキストの照合ができる。この安心感は仕事をしてゆくうえで絶大である。
本書も、「語録」は底本(無著道忠筆・京都龍華院本)を他の二本(岐阜南泉寺本及び京都法輪寺本)で校勘し、「行実」は底本(岐阜南泉寺本)を他の三本(岐阜多福寺本、京都法輪寺本、京都龍華院本)で校勘、その結果が分かりやすく太字で明記されている(「拾遺」は岐阜正眼寺本だけなので、もちろん校勘はない)。
注も過不足なく、必要な情報が極めて分かりやすく提示されていて、禅師に対する敬愛の気持ちまで伝わってくる。
良書をまた一冊書架に並べることができて、何とも嬉しい午後になった。
『大愚和尚語録・拾遺・行実』 訓注・能仁晃道