“松花堂の茶の湯-八幡の茶室に学ぶ-”を拝見しに、八幡市にあります松花堂庭園・美術館を久しぶりに尋ねました。
いわずもがな、松花堂昭乗は、近衛信尹・本阿弥光悦と共に寛永の三筆と讃えられた書の名人ですが、書のみならず、画、茶、作庭、その他諸々に通じたこの時代を代表する文人でした。
石清水八幡宮の境内にあった寺(明治維新までは八幡宮の境内に約60を数える坊があったのだとか)にいた社僧(真言密教を極めた阿闍梨でもありました)でしたが、寺を譲った後は、“松花堂”と名付けた庵に住まいしました。
その庵が移築され、今もなお松花堂庭園内にその姿を残していますが、茶道を習い始めた頃の私が初めてこちらを訪れた時には、衝撃を受けたものです。
「茶を点てて、仏にそなへ、人にほどこし、吾も飲む」を具現化、まさに必要の無いものは極限まで削ぎ落としたような草庵。それでいて、侘び過ぎているわけではなく、どこか気品漂い、こじんまりとしつつも荘厳な寺院のごとく厳かな雰囲気あり、なぜか江戸の文化が花開いた当時の事も思わせられ、神仏習合も見て取れるような、形容しがたい佇まいを見せていたのです。松花堂昭乗その人そのものがよくよく現れているなぁ……と思ったものです。
久々に見てもその思いはやはり色あせる事なく、それどころかさらに感動してしまいました。茶を習う者が行き着きたいと願う境地ではないでしょうか。
美術館では、親類でもあった小堀遠州との交流がみてとれるような茶道具が出展され、松花堂の周りの数々の文化人についても学ぶ事ができ、非常に充実した内容となっていました。
この展観は14日(日)までですので、是非ともご予定無い方はおでかけ下さい。