この逸翁美術館では、阪急グループの創始者である、小林一三翁の所蔵品を公開している。
いつもは、逸翁(小林一三の雅号)が日本のみならず、世界各国でみつけて来た-見立て-の道具(元々は茶道具ではないものを、茶道具とみたてて使う)が数多く展示され、「こんな物を蓋置きに!こんなものを建水に?!」と驚かされるのだが、今回は全てお家元に関係するお道具や書、千家十職による道具の展示だ。
改めて、連綿と受け継がれて来た職家の技の素晴らしさやその心、家で代々物づくりを受け継いでいく事の大変さ、家元との代々に亘る交流などを垣間見て、使う者は心して使わなくてはならないと身が引き締まる思いであった。
【千家十職】
千家の好み道具を制作する職家十家をいう。大正4年(1915)、松阪屋百貨店で職家の制作になる好み道具の展観がおこなわれたとき、はじめて「千家十職」の呼称が用いられ、以来、職家の通称として通じている。
表千家不審菴公式HP 茶の湯 こころと美 より
千家十職は、下記の家々をいう。当代はほぼ、下記の名前を代々継ぐ事となっている。
○樂吉左衛門(陶工/茶碗など)
○黒田正玄(柄杓師/柄杓・竹花入・蓋置など)
○駒沢利斎(指物師/棚物・曲物・炉縁など)
○永楽善五郎(土風炉師/茶碗・水指など)
○大西清右衛門(釜師/風炉釜など)
○土田友湖(袋師/袱紗・仕覆など)
○中川浄益(金物師/皆具・火箸・鉄瓶など)
○飛来一閑(一閑張細工師/薄茶器・菓子器・盆など)
○中村宗哲(塗師/薄茶器・盆・香合など)
○奥村吉兵衛(表具師/軸装・風炉先・襖など)
十職によるお道具の他に、私が何年か前に一度拝見(記憶は曖昧だが、毎年この美術館で行なわれる逸翁忌の茶会の床に掛けられていた)して、その字が心に焼き付いてならなかった、千宗旦筆「喝」の軸がお目見えしていた。
この字の事をことばで表わそうにも、自分の表現力の無さがこの字を台無しにしてはいけないので、是非皆さまには、ご自分の目で確かめていただきたいと思う。
休日という事もあり、逸翁が考案した茶室-即庵-にて、薄茶を一服いただいた。
土日は必ず近隣の先生方が釜を懸けられるのだ。
自分が習っている流派以外のお点前を拝見できる貴重な機会でもあり、また、逸翁が愛した所蔵品で一服いただけるとあって、毎回こちらでの一服を楽しみにしている。
逸翁美術館HP