『東慶寺 季の味 -北鎌倉 花の寺の庫裡から-』井上米輝子


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著者の井上米輝子さんは東慶寺の寺庭である。以前に季刊『禅文化』に「まつがおか日記」と題して、鎌倉東慶寺の四季のくらしを連載いただいたことがあるが(206~209号掲載)、ご文章にふれ、添付写真を拝見するのを、心待ちにしていた記憶がある。
本日、新刊のご本を頂戴して、しばし時を忘れて拝読、拝見した。まず表紙のすばらしさはどうだろう。いずれもご自身の着物と帯からとられたものだという。頁をめくるごとに、在家から嫁がれて、名刹にしっとりと溶け込まれた米輝子さんの柔軟さと、大抵ではない審美眼に圧倒される。なんという花を生けられることか。
以前から米輝子さんの料理に対する造詣の深さは定評があったが、作り方の手ほどきとともに器に盛られたそれぞれが、いずれもどれほど気持ちよい美味しさだろうと、また深々と驚嘆する。
クオリティ・オブ・ライフなどという言葉が、ひっくり返っても届かない、ほんとうに美しい昔ながらの日々がここにはあるのだなと、とびきりのご本を手にして、あらためて納得したのである。

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『東慶寺 季(とき)の味 -北鎌倉 花の寺の庫裡(くり)から-』
井上米輝子著(世界文化社、2012年11月1日発行)2400円(税別)