『天のしずく-辰巳芳子いのちのスープ-』


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『天のしずく-辰巳芳子いのちのスープ-』を観てきました(辰巳さんがどのような方か御存知無い方はこちらで。)。
私は大学生時代のゼミで彼女の事を知ったのですが、彼女のスープの本はパラパラとページをめくり、眺めているだけでも“元気が出る本”として、私の本棚にいつも置いてありました。
食によって自分の身心を整え、変えてゆきたいと願う者にとって、指針となるような事を多く語り、実行してくださっている方の活動が、このように映像として残る事に、また、東日本大震災を経て、これからの食の在り方(=生き方)が問われている今、多くの人に辰巳さんの食に対する考えが広まる事に、有難い心持ちで拝見させていただきました。
映像の中で最も印象的だったのが、辰巳さんの手。
自分はこの有難くも与えられた両手、指を、全くと言ってしまっても過言ではないほどに、使っていないなぁ……と痛感。
ボタン一つで多くの事ができてしまうようになった世の中。手を使わなくなった事が、我々からどれだけ多くの大切なことを知らず知らずのうちに奪っていっているのか……考えさせられました。
さらに、私は「長生きをしたい」という思いを抱いた事が無かったのですが、それは驕りだなと思い知らされました。
近頃、お話を拝聴する尊敬すべき方々が口を揃えて、
「この年齢になってようやく少しわかりました(岡村美穂子先生/鈴木大拙秘書)」。
「少しものごとがわかったなぁと近頃ふと思う事がある。死に近づいているという事やね(福森雅武先生/土樂窯)」。
などと仰るので、「ふぅむ……」と思っていましたら、またこの映画でも、辰巳さんと、人生の大半を長島愛生園で過ごしていらっしゃる女性の方が二人して、「80歳を超えなければわからない事があると思うんです(女性)」、「私もよ。この歳になって漸くわかった事があります。(ここまで生きてきて)良かったわね(辰巳さん)」と、穏やかな瀬戸内海を眺めながら悦び合うシーンがありました。
私の命が、どれだけ生かされるのかはわかりませんが、その境地も知ってみたいものだな……と思うのと同時に、少し虚無感が立ち去るような、明るい心地になれたのでした。