皆さん、明けましてお目出度ございます。
このように年頭のお祝辞を述べましても、果たしてこの一年がどのような年になるか、誰も予測することはできません。ただはっきりしていることは、人生というものが向こうに断崖絶壁の待ち構える坂道を、ブレーキのないトロッコに乗って下るようなものだということですから、これは余程の覚悟がないとできない芸当だということでしょう。
パスカルは『パンセ』の中で、「人間というものは、向こうにある絶望(死)が悍ましく前へ進めないので、しばらく『希望』という目隠しの板を立てて前進するだけだ」、と書いています。言われてみれば、本当にそうですね。
私たちは確率だけを信じて前進する「近代科学的な生き方」を止め、縁に従って毎日毎日を大切に生きていくことを説く「仏教の生き方」によって、自分の人生を一歩一歩進めるべきではないでしょうか。
そう考えるとやっぱり一休和尚の、「元日は 冥土の旅の一里塚 めでたくもあり めでたくもなし」という一句のもつ不変の新鮮さに、今更のように気付かされるばかりです。どれほど時代が進もうと変わらない、真実を言い当てたこの覚醒の一句をもって、改めて年頭のご挨拶に代えさせさせて頂きたいと思います。
どうぞこの一年が皆さん一人ひとりとって、「日々好日」の毎日でありますように。
所長 西村惠信 合掌