尊い営みを拝見させていただけました。
自然界に存在するもののみで染められた色は、当然ながら、調和というものを教えてくれます。
不協和音を奏でるという事がありません。
これからの世界に必要な大切な教えが、“染司よしおか”のしごとにありました。
御存知東大寺のお水取りで十一面観音様にお供えされる和紙で作られた椿の赤は、”染司よしおか”にて紅花によって染められた赤なわけですが、昔は一枚の和紙を染めるのに1キロの紅花で事足りたのが、現在では1.3~1.5キロの紅花が必要なのだとか。
上記の例にも見られるように、「植物の力、大地の力が弱って来ている」とは、この映画の主人公で”染司よしおか”現当主の吉岡幸雄氏、そして職人の福田伝士氏のおことば。
染めに使う天然の材料を確保する困難さ。奈良時代の染色や織の技術に、今の技術が追いつかないという事実。様々な事への地道な挑戦は、現代を生きる我々に警鐘を鳴らしていらっしゃるようにも見えて……。
発展と便利さを手に入れたが故に失ってきた大切なものについて考える時、私は何度も耳にした、今は亡き永源寺派元管長・篠原大雄老師の、「back to the basic 原点に立ち返りなさい」という御言葉と、僧堂で炭焼きや畑仕事をする雲水達の姿が思い出されてなりません。
インドを旅行した際、インド人の青年は「なぜ日本人はそんなに働くのですか?畑をしていれば、食べてゆけます」と不思議そうに聞いてきました。なぜなのでしょうね。
私の友人の中にも、「あえて不便を選ぶ」という人が少しずつですが出てきています。
さて、今年は何を手放しましょうか……。
『紫』は、現在大阪は十三の第七藝術劇場にて上映中です。
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是非お運びください。