『昆布と日本人』(日経プレミアシリーズ)
著/御昆布司 奥井海生堂社長・奥井隆氏
よくお世話になっている方が、その熱い思いを一冊の本にまとめられましたのでご紹介です。
まず、この本の全編を通して一番に心に染みたのは、奥井社長が“おかげさま”の精神を貫いていらっしゃる事でした。
若き頃から変わらぬその姿勢で、日本のみならず世界より厚い人望を集める今がおありになるんだなぁ……と、ご本人を存じている私としてはとても感慨深いものでした。
さて、「日本人とはなんぞや……」というのは、いつも私が気にしている所ではありますが、美術工芸品や思想や歴史方面からそこを考えてみたりしても、人の身体と精神を作っているのは食。
とくれば、1000年以上の歴史がある昆布の事を知る事は、日本人を知る事そのもので、この本を読み、目から鱗でした。
山多く、海に囲まれた豊かな国だからこその産物である昆布。自然から与えられたその恵みを生かし切ってきた日本人の智恵。
学校で習う歴史は、いつも“人”が中心でしたが、“昆布”を中心に見てゆくそれはまた何と興味深い事でしょう。
料理人のみならず、商売人はもちろんの事、そして我らが禅宗の典座は精進である為、昆布の出汁は欠かせぬもの。もちろん家庭においても出汁が決めての日本の料理であるからして、広く皆さんに読んでいただきたい本なのでした。
日本の食を見直す事は、明るい世へと次世代を導く事に繋がります。
戦後失った日本人としてのアイデンティティを取り戻すのも食を通して……でしょうか。
ちなみに私も普段は毎日手作り弁当ですが、それに加えて最近は温かい味噌汁やスープを持参しています。
昆布で出汁を取る場合は、60℃でうまみを最大限に引き出す方法で。
是非皆様も実践してみてください!