『禅文化』227号 技を訪う-育つ襖-
 川辺紀子(禅文化研究所所員)

日々の生活で出会った素晴らしい様々な“技”を、季刊『禅文化』にてご紹介しています。
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季刊『禅文化』227号より
“技を訪う -育つ襖-”  川辺紀子(禅文化研究所所員)

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福森氏と嘉戸氏

以前にご紹介した「かみ添」の当主・嘉戸浩氏(『禅文化』216号)に、土樂窯の福森雅武氏(同221号)が、ご自宅の襖紙を依頼された。「思いのままに作ってほしい」ということだったようだ。
家も器も、花も食べ物も、細部にまで心をそそぎ、なにひとつ等閑にされない福森先生が、あっけらかんと嘉戸浩氏に襖紙を委ねられたと聞いてびっくりした。
一体どういうことになるのだろうと興味津々だったが、襖が入る日にお声をかけていただいたので、何を置いてもと駆けつけた。

一見したとき、素敵には違いないけれど、と思ったが、心奪われるという感じではなかった。嘉戸さんの「らしさ」が見えない。言い換えれば、それくらいしっくりと、部屋に収まってしまったのだ。
福森先生が自ら設計し、銘木がふんだんに使われた圧倒的な空間にあって、嘉戸さんは「自分を出すところではない」と思われたようだ。
「土樂さんには毎年、たくさんのお客が訪れる。そんな出会いの場で、襖紙がどんなふうに変わってゆくのか楽しんでほしい」と嘉戸さんは言われる。
すでに違和感なく福森家の一部となった襖だが、場の空気をすって、もっともっと育ってゆくのかと思ったら、次にお訪ねするのがますます楽しみになった。

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福森先生が桂離宮・松琴亭の市松模様の襖がお好きな事から、
柿渋のもみ紙を縦揉み、横揉みにして市松模様に

 

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この日の土樂さんのお床。花は言わずもがな、福森先生による

土樂窯
〒518-1325 三重県伊賀市丸柱1043

かみ添
〒603-8223 京都市北区紫野東藤ノ森町11-1