-花の風姿- 金沢能楽美術館

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恐らく、金沢にゆかれた方はほぼどなたもが立ち寄るであろう、現代美術館としては異例の(と言うとおかしいのでしょうか…)人気を誇る、金沢21世紀美術館
そのお隣に、ひっそりと佇むのが、金沢能楽美術館です。正直、現代アートというものを心底楽しむ事ができない私には、とても落ち着く美術館です。
今回は“藤”の花にちなんだ能装束などが飾られ、それは見事な展観なのでした。

能楽は武家の嗜みであるからして、金沢にて盛んであった事は何の不思議もありません。初代利家は、秀吉の影響もあり金春流を贔屓にしていたそうですが、五代藩主綱紀が、五代将軍綱吉の影響を受け、宝生流の能楽を奨励した事から、加賀宝生として、現在もなおその伝統を守り続けています。
金沢の地では、専業の能役者、それに準ずる家柄のみならず、町人が兼業として能楽をたしなむ町役者の存在があり、手厚く保護されたのだとか。茶の湯に感じた身近さと同じく、能楽に関しても、庶民が鑑賞できるような機会も多々あり、次は能楽鑑賞の為に金沢を訪れたいと思いました。

こういった文化芸能が、ある特定の人のみによって保護されたり楽しまれたりするのではなく、広く一般に染み渡っている事が、加賀の三太郎(鈴木大拙・貞太郎、西田幾多郎、藤岡作太郎)など、日本の文化や思想を後世へと引き継ぐのに重要な役割を果たす人物を生み出す事へと繋がるのであろう……と感慨深く、美術館を後にしました。

*追記
以前お邪魔した時には無かったのですが、今回訪れてみますと、能装束の着装コーナーができていました。舞妓さんの疑似体験には全く興味の無い私も、これには足を止めざるをえず……。なんと面まで自分の好きなものが撰べるのです。般若ですとあまりに似合いすぎる(というか、そのままです)ので、普通に小面をつけさせていただきました。初めての体験でしたが、なんと視界の狭い事。能役者が舞台で舞うことの苦労をほんの少しでも味わう事ができました。オススメです。