『人生、行きがかりじょう 全部ゆるしてゴキゲンに』(ミシマ社)

 

131003.jpgとても面白い本を読みました。自称・日本初の「酒場ライター」である、バッキー井上さんの新刊です。「画家」「踊り子」「ひとり〝電通〟」を経て現在は「漬物屋店主」「居酒屋店主」でもあるバッキーさんが選ぶ言葉は、かなり独特。本書は、バッキーさんが多用される言葉のひとつがそのままタイトルになっています。

【行きがかりじょう】の定義とは、

自分が選択をして、
現れるものと向き合い、
すべてポジティブに反応すること。
シアワセになるための基本的な心構えであり、
ゴキゲンへの道しるべであり、
すぐれた戦法でもある。
(本書より)

「人生、行きがかりじょう」。バッキーさんは常にこう考えます。目当ての居酒屋が臨時休業だった時も、大きめのトラブルに見舞われた時も、身体がきつい時も、もちろん最高に楽しいときも。たとえ不利な状態に陥ったとしても、自分が置かれている状況をめいっぱい愛することが大前提。そして、いまある条件の中で最もゴキゲンな流れに繋がる方法を考えるのです。こうしてひたすらポジティブに「行きがかりじょう」を実践するバッキーさんの人生は、小さな工夫や機転がいっぱいで実に痛快!!同時に、嫌みのない気遣いとサービス精神に満ちあふれていていることにも気づかされます。なぜなら、自分がゴキゲンであるためには、関わる相手が心地良くあることも重要だから。

「倍返し」に対して、「行きがかりじょう」の何と平和な戦法であることでしょう。

水道工事をしていたバッキーさんは、広告会社に潜り込んだと思ったら何故かペンキを塗ってフライパンを振り、お金が必要だという理由で画家に。その全てが状況に応じて選択を重ねた結果なのですが、

「『結果』って、自分で勝手に決めてるだけで、全部、『コンテニュー』やな」(本書より)。

この選択が次はどこに繋がっていくのだろう!?と 気になってページを繰る手が止まらなくなり(少なくともこの段階で、著者がお漬物を作り始める気配はまだ微塵もありません)、ゆっくり楽しむつもりが一気に読み切ってしまったのでした。聞き書きということもあり、まるでご本人からお話を伺っているようで終始ワクワクする一冊です。皆さんも是非。

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【バッキー井上さんのお店】
錦・高倉屋

京都 百錬