東日本大震災より三年目を迎えた節目の日、2014年3月11日に、円覚寺派管長・横田南嶺老師が『祈りの延命十句観音経』(春秋社)を上梓なさいました。
「菩薩行とは、その人のところまで自らが降りていって、クレーンで高い所へひょいっとひっぱりあげるように連れてくる事です」。と、いつでしたか、堀内宗心宗匠が仰ったおことばを、この本を読んでいて思い出しました。
東日本大震災に続き、ご自身の故郷の紀伊半島を襲った大水害を機に、「延命十句観音経」を少しでも多くの方に広めたいという老師の願いと、いのりの持つ力というものを、多くの方にわかるように、易しい言葉で、慈悲深く説く行為とは、まさに菩薩行なのでした。
これは何も、震災の被災地の方々に向けてのみ語られたものではありません。生きていれば、皆それぞれに悩み苦しみは尽きないもので、私自身まさに、苦しみの海から、ひょいっと救い上げていただいたような心地がしたのでした。
宗教関連本というのはそれこそ数多く出版されていますが、宗教宗派は関係なく私が良いなと思う本というのは、著者の厳しい修行により得たお悟りや清々しい心境、今(瞬間)を生きる姿がそのままこちらの身心奥深くへと、瑞々しく流れてくるような感覚を覚える本です。
まさにそのような一冊。宗教というものの、本来のまっとうな御教えをいただき、感謝です。人間は忘れるのがあまりに得意ですから、何度も読み返して、自身にすりこませてゆきたいものだと思いました。
*本日の20時~約1時間、BS日テレ「わが心の聖地」に、横田南嶺老師がご出演なさいます。姜尚中さんが心の聖地、円覚寺を訪れ、管長猊下とお話なさるようです。是非ご覧ください。
最後に、延命十句観音経と、横田南嶺老師による和讃をご紹介させていただきます。
〇延命十句観音経
観世音 南無仏(かんぜおん なむぶつ)
与仏有因 与仏有縁(よぶつういん よぶつうえん)
仏法僧縁 常楽我浄(ぶっぽうそうえん じょうらくがじょう)
朝念観世音 暮念観世音(ちょうねんかんぜおん ぼねんかんぜおん)
念念従心起 念念不離心 (ねんねんじゅうしんき ねんねんふりしん)
〇延命十句観音経 意訳(和讃)
観音さま
どうか人の世の苦しみをお救い下さい
人の苦しみをすくおうとなさる
そのこころこそ仏さまのみこころであり
私たちのよりどころです
この仏さまのこころが
私たちの持って生まれた本心であり
さまざまなご縁にめぐまれて
このこころに気がつくことができます
仏さまと 仏さまの教えと
教えを共に学ぶ仲間とによって
わたしたちはいつの世にあっても
変わることのない思いやりのこころを知り
苦しみ多い中にあって 人の為に尽くす楽しみを知り
この慈悲のこころを持って生きることが本当の自分であり
汚れ多き世の中で 清らかな道であると知りました
朝に観音さまを念じ 夕べに観音さまを念じ
一念一念 何をするにつけても
この思いやりのこころから行い
一念一念 何をするにつけても
観音さまのこころから離れません