今年度最初のサンガセミナーのご報告です。
町田香先生(京都造形芸術大学非常勤講師)をお招きして、「禅の庭入門講座―室町・鎌倉編」が、6月24日(火)に開催されました。
そもそも、「研究所には庭の本は無いのですか?」というご質問を受ける事も多く、ご関心おありの方が多いのではないかと思った事と、私の親友(町田先生です)が庭を研究していた事から、このような講座を設けさせていただく運びとなりました。
和尚様方よりも、一般参加者の方が多くお集まりかな?と思っていましたが、蓋を開けてみるとご住職の参加が多く、遠くは広島や徳島、静岡などからも、ご関心をお持ちの多くの方にお集まりいただき、有り難い事でした。
まず午前中は天龍寺さんの友雲庵をお借りして、座学の時間を持ちました。
飛鳥時代からの庭園の歴史を、様々な資料写真をスクリーンにて拝見しながらのお話は、誠に興味深くわかりやすく、まるで庭園史の分厚い本の飛鳥時代から室町・鎌倉の庭までを90分で読み終えたかのような充実感でした。
いわゆる“枯山水”の庭がどのような変遷を経て作られるようになったのかなど、大きな流れがわかり、庭への理解が深まったように思います。
そして、日本の歴史を通しての庭というものの意味合い、限られた世界の中に内包されるスケールの大きさなどに思いを馳せました。
個人的には、教科書では決して習う事のなかった、蘇我馬子の邸宅の庭跡についてが興味深く、飛鳥時代の歴史を学び、遺跡を訪れたくなってきました。今回焦点を当てましたのは、禅の庭の中でも、室町・鎌倉の庭だったわけですが、庭園史の流れを知る事で、逆に違う時代に興味を持つことになるという面白い体験をさせていただきました。
ご参加の皆さまも、それぞれに興味をもたれた部分は違った事でしょう。
和尚様方の中には、ご自坊の庭の改修についてなどを先生にご相談される方もみえました。
90分の座学の後は、天龍寺の篩月さんの精進料理をいただき、休憩時間。
この度天龍寺さんにお借りしました建物は、元僧堂でしたので、皆さま昼食後は自由に拝観され、お写真など撮られていました。
午後からは、実際に庭を見ながら先生のお話を。
特別に、方丈の中に入らせていただき、先生が「ここからの眺めが一番です」と仰る場所から庭を観させていただきます。
さらに総長さんにもおでましいただき、お話をお聞かせいただきました。その中で、大堰川の水を引いて来て、茶室の露地(庭)に小川のせせらぎを作っているとのお話が出ましたので、これは!!!と思い、急なお願いとなりましたが無理を申しまして、茶室と露地を拝見させていただきました。
ご対応に、頭が上がりません・・・・・・。有り難い事でした。皆さまもとても喜んでくださり、嬉しい事でした。
鎌倉時代のお庭の代表として、天龍寺さんのお庭を学ばせていただいた後は、大徳寺へ。
室町時代の代表的庭園として、真珠庵さんを拝観させていただきます。我々だけの貸し切り状態で、ゆっくりと先生のお話を聴き、お庭や金森宗和ゆかりの特徴的な茶室の拝観など、心ゆくまで堪能させていただきました。
さらに、来年度に予定している、江戸時代~近代の庭へのアプローチとしまして、芳春院さんも拝観。方丈前の中根金作先生作庭の庭(平成)、さらに呑湖閣へのアプローチとなる西庭、呑湖閣を開帳、書院も開けていただき、その間にあるご住職様が庭師さんと共に作庭されたという北庭を様々な角度から眺め、こちらでの時間も、充分に庭を満喫できるものとなりました。
ご参加いただきました皆さま、ご協力いただきました各ご寺院、そして先生に心より感謝致します。来年度は、先ほど申しましたとおり、江戸~近代の庭の講座を開催できたらと思っておりますが、ご好評の庭講座、「浜松の庭」・「鎌倉の庭」など、時代ではなく場所で区切ったりして学ぶのも楽しいかもしれない・・・と、色々と計画したい衝動に駆られております。
なお、是非うちのお寺で庭講座を開催してほしい!というご住職様がおられましたら、共催という形で学ぶ機会を設けられたらと思いますので、お申し出くださいませ。