禅文化研究所では、平成19年度より、新しい事業として「文化財目録整備事業」を開始した。
それにともなって、この4月1日より「禅文化財目録データベース」が本運用されはじめた。
現時点での利用者は、大本山 建長寺・大本山 建仁寺・大本山 東福寺・大本山 天龍寺・禅文化研究所の五団体である。
これは、臨済宗黄檗宗各派の本山・寺院及び関係機関が所有する宝物・什物などの目録及びそれに関する画像等をデジタル的に整備保存することを趣旨とし、禅芸術・禅文化を将来に伝えるべく、共通の指針の上で情報を 蓄積していくことを目的とするものである。
このデータベースは現時点では一般に公開されるものではないが、利用者間では情報を共有していくことができる。将来的には、禅芸術のバーチャル美術館への発展も考えている。
各本山や寺院では、指定文化財を含む多くの宝物・什物を管理されているが、それらは依然として旧来の方法、つまり手書きの目録やポジまたはネガフィルム等で管理されているところがほとんどである。
そこで、これらをデジタルアーカイブとして管理していくための指針を提案し、その管理システムとして今回の「禅文化財目録DB」を制作したのである。
また、数年前より、禅文化研究所では、(財)京都国際文化財団と連携して、禅文化財のデジタルアーカイブにおける指針作りをすすめてきたことの一つの成果でもある。
ソフトウェアは、日本ヒューレットパッカード社の「DSpace」日本語版というソフトウェアをベースに利用して、ソラン株式会社、禅文化研究所によって制作された。
DSpaceというソフトウェアは、マサチューセッツ工科大学とヒュレーットパッカード社が共同開発した、大学や研究機関、美術館、博物館などのデジタルコンテンツの管理や情報共有のために制作されたオープンソースで、欧米の機関はもちろんのこと、日本だけでも40を越える大学研究機関で採用されていると聞く。
このソフトウェアでは、1宝物についての複数の画像を管理できることはもちろん、画像だけではなく、関係論文等のデータファイルも紐付けして管理できるなどという点で、他にはない特色を持っている。
また、サーバーで動作するため、利用者の各パソコンにソフトウェアを導入することは不要で、インターネットに接続されているだけで、IDとパスワードがあれば、どこからでも運用できる。
今後、ますます多くの寺院等がこの事業をご理解いただき、ご利用いただくように願ってやまない。