先週のお休みの日に、親友でもある土楽窯・福森道歩さんが、自身の窯にて窯焚きをするということで、見学にお邪魔させていただいていました。
以前、お父上・福森雅武先生の野焼きにもお邪魔し、あまりの迫力と、何もお手伝いができないふがいなさに打ちのめされ、立ち尽くしていたのを覚えていますが、久々の窯焚きにまた圧倒され、呆然とする私……。
何かさせてもらいたいと思っても、あまりに何もできなさすぎて、かえって邪魔になるのでは…と、見ている事しかできません。
そして以前と同じように「あぁ、私にこんなにも一所懸命になる瞬間があるだろうか・・・」と自身を顧みるのですが、今回は、「最初は邪魔になるだろうけれど、やらせてもらってみよう!」と、恐る恐る鉈での薪割りを。
「なんでそんな割りにくい木を選ぶねん…」と呆れられつつも(だって本当に全くわからないわけです…)、どのような木が割りやすいのか、少しずつですがわかってきます。
都会のサラリーマン家庭に育った私には、この年齢になっても何もかもが新鮮で、全てが初体験。
道歩さんと、お姉さんの柏木円さん(独立され、主に磁器を作っておられます)の働く姿を眩しく眺めつつ、まるで赤子のごとく何もできない私が、側でとても大切な事を一から学ばせてもらっています。
表千家の堀内宗心宗匠は、ご自身が堀内家を嗣ぐなどとは思われる事も無く(三男でいらっしゃいました)、京大にて物理学の研究をされていました。が、お兄様方の予想外に早過ぎる旅立ちに、ご自身が家を嗣がれる事となり、本格的にお茶の世界に入り修行をなされたのは、大学を卒業なさってからとなるわけですが、「かえって他の分野で学んだ事がお茶の世界への理解を深める事になりました」と仰っています。
私も、窯焚きにゆけば赤子ですが、今までの人生で学ばせていただいた色々により、赤子なりにも、彼女たちの働く姿を見ていると、この年齢だからこそ色々と理解できる事もあるわけで、宗匠のおことばを励みに、迷惑をかけながらも何らか気づいたり、掴めるものがある窯焚きには、是非とも今後も馳せ参じたいと思っている次第です。
そして、窯焚きにも、窯そのものの構造や、薪の入れ方、温度の調節、灰を被せて陶器に景色をつけたりと、もちろん色々工夫をするわけではありますが、温度が下がり、窯出しをするまではわからない、一種おまかせの世界です。
こうしてやろう!でなく、どこかで良い意味で解放されて、力も抜けて、おまかせできた時に、色んな目に見えぬものが動いて、結果としてそれが現れる世界。
もうこれは、物を作る時に限らず、私たち自身が、どのように生きていると、自己の本来の力が存分に引き出されるのか……というところまでを教えてくれるような気がしています。
尊い教え、尊い学びをいただく機会でした。
*今回の窯焚きでの作品は、東京・ほぼ日さんのTOBICHIでの展覧会(4/10~12)に出品されます。是非ご覧になってみてください。