映画『駆込み女と駆出し男』

 

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大変な人気のようで、いまさら説明するまでもないかもしれないのですが。

同作は井上ひさし氏の『東慶寺花だより』を原案とした人情劇。女性からの離縁が許されなかった江戸時代、唯一の手段として幕府公認の縁切寺に駆込んだ「駆込み女」たちと、その再出発を助ける御用宿の人々の物語です。

大泉洋さん演じる中村信次郎は、医者見習いで戯作者を夢見る御用宿の居候。タイトルの「駆出し男」とは、なるほどそういうことだったのですね。「駆込む」と「駆出す」はまったく逆ですが、対極にあるものが交差することもあるというのが、人生の面白いところだなと思いました。

そして、ただ自分の明日のみを考えて死にもの狂いでやって来た「駆込む」人々。平行だった彼女たちの人生もまた、交わっていくのです。

皆それぞれの人生を生きているだけなのですが、それでもさまざまな出会いがある。映画に限った話ではなく、現実の世界も同じではないでしょうか。さらに、この作品におけるすべての出会いは、そもそも切れる縁があったからこそというのもまた皮肉な話で、「縁」というのはやはり不思議なものだと感じます。

劇中、江戸の豪商の妾・お吟が、駆込み途中の山中で知り合った鉄錬り(鉄工)女・じょごに、お国言葉を訊ねるシーンがありました。そのときお吟が教わった方言は、終盤とても大きな意味を持って使われるのですが、縁への感謝が込められた短くも素敵な言葉です。

よろしければ、ぜひ劇場で。

『駆込み女と駆出し男』予告編