鏡板の松 -水墨画家・平川功-

水墨画家である友人が、とある方からの依頼でご自宅にある能舞台に松を描きました。

この依頼が来てからというもの、彼は様々な能舞台の松をファイリングしたものを持ち歩き、仲間達でそれを見させてもらったり、展覧会で地方に行った際にも、寺社に参拝すれば一人ずっと松を眺め、松と対峙してきていました。

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私もお能は好きで度々観にでかけますが、やはり松は神の依り代とも言える象徴的なもの。

鏡板の松が舞台で如何に重要であるかは言うまでもなく、「個人のご自宅の稽古場とはいえ、施主の気に合うものを描くというのは非常にプレッシャーであろう・・・どのような松が描かれるのか・・・」と、他人事とは思えず、楽しみにもしつつも緊張していました。

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やがて彼が一週間超に及ぶ制作の旅から帰り、見させてもらった松の写真に言葉も無く、脳裏にはふと「室町時代・・・」という言葉が浮かんでいました。

室町時代の能舞台に松が描かれていたわけではなく、現在のような舞台ができる前は、屋外の大きな木の下に舞台が作られ、木は目印にもなり、また、神の依り代ともなったようです(諸説あり)が、この松は、舞台上に描かれた松という枠と時空を超えて、足利将軍の治世のもと、文化の大輪の花が開いた時代を彷彿とさせるものが確かにあったのです。 

150626-3.jpg普段は彼の水墨画を目にしているので、着色のものを観たという事もとても新鮮でした。
きっと、施主さんは丹田に力も入り、松を背中に神仏に見守られ、前とは違った感覚で舞われているのだろうと想像します。

150626-4.jpgそんな松を描いた平川功先生が、サンガセミナーで水墨画講座を担当くださいます。
初めての方も、今まで何らか絵を描いてこられた方も、是非ご参加いただければと思います。
お待ち申し上げております。

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