展示内容はもちろんのこと、解説のわかりやすさやそのビジュアルの面白さにかけては群を抜いていると思える龍谷ミュージアム。
縁あって訪れた、仏教については詳しくない一般の方々にもわかっていただこうという心くばりが随所に見られ、個人的にも大好きなミュージアムです。
さて、今回は『玄奘』展。かの玄奘三蔵法師がテーマなのです。
玄奘三蔵といえば、中国は唐の時代、7世紀に実存したお坊さんで、国禁(唐は鎖国政策を採っていました)を侵してまで、困難な旅の末にインドから経典を持ち帰った御方。実在の人物です。
中国からインドへというと、皆様地図を広げてみてくださいませ。登山グッズや便利グッズが溢れている現在でも、どれだけ重装備をして用意すれど、そこを現代的な乗り物に頼らず行こうと思えば、、、想像もつかない道のりなわけであります。
度重なる困難を乗り越え、インドから経典を持ち帰り、生涯を賭してその翻訳に携わった玄奘三蔵。
まさに伝説的なその超人的偉業は、行く手を阻む様々な妖怪などが現れては邪魔をするのを、時にはお付きの者たちが、また時には神通力でたちまち倒してしまう・・・そう、かの『西遊記』という物語の基となったわけであります。
パンフレット500円。三蔵法師の歩いた道がわかる地図が!
今回の展示では、そんな伝説化した、超人的な存在としてとらえられがちな玄奘三蔵を、多くの困難や苦悩に苛まれながらも、強い意志を持って生きた一人の人間として見つめてみようではないか・・・という素晴らしい試みなのでありました。
この夏私の中で一番熱い展覧会でした。
と申しますのも、くしくもこの展覧会を観に行った直後に、玄奘三蔵も学んだインドのナーランダ、たどり着いた時に突っ伏して号泣されたというブッダガヤのお釈迦様悟りの地、マハボディ寺院に訪れる予定だったからです。
「インドは人を呼ぶと言うが、今回は三蔵法師に呼ばれたのではないか・・・」などと一人都合の良い妄想にふけて心躍らせるのでありました。
実際この夏は三蔵法師にまつわる色々が私の周りにあったのですが、他のお話はまたいずれ。
展観は9月27日までです。私もいま一度訪れようと思っています。皆様も是非!
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インドに数ある大僧院の中でも、このナーランダほど壮麗崇高な僧院はない。
ここでは、1万ともなる僧達が大乗も小乗の教えも共に学び研鑽している。慎み深く、そして厳粛に。
『大慈恩寺三蔵法師伝 巻3』
僧坊。玄奘三蔵が使ったと伝わる部屋。遺跡の入り口で雇ったインド人ガイドが言っていたので、本当かどうかは定かではありませんが、信じて思いを馳せてみました。