先にもご紹介させていただきましたが、本年は鈴木大拙先生の没後50年という節目の年です。
出版や講演会など、様々な企画が各地にて開催される事と存じますが、このたび、先生の英文著書『The Training of the Zen Buddhist Monk』の邦訳である『禅堂生活』が、装い新たに岩波文庫より文庫本として発刊されました。
今回はさらに、「僧堂教育論」ほか、大拙先生とゆかりある円覚寺の老師方に関する随想など五篇が収められ、巻末には円覚寺派管長・横田南嶺老師が解説を、駒澤大学教授・小川隆先生が解題をご執筆なさっておられます。
弊所の『雲水日記』は読みやすいのが特徴で、画・一枚につき、禅堂の生活の一コマを平易な文章でご紹介しております。
それに飽き足らない方は、大拙先生の『禅堂生活』を是非。
おおもととなるのは、大拙先生が通われた円覚僧堂の事だそうですが、中国の禅籍の知識の海を自在に泳がれるがごとく行き来され引用、さらに深い精神性を垣間見られる事でしょう。
挿絵は妙心僧堂がモデルだそうで、東慶寺男僧三世・佐藤禅忠和尚によるもの。洒脱な印象が好ましく、興味深く眺めております。特に第三十二図 坐禅儀。坐禅をされているお姿を、衣が透けるように描かれた画などは、“坐禅腹”を拝見し、「なるほど」と思ったり……。
「禅堂教育論」には非常に厳しい事が書かれています。
当時の大拙先生が禅僧の堕落を嘆かれ「今は昔と違って…」などと書かれているのを拝読するだに、それでは現在はどうなるのだろう?と思うわけですが、どの分野、世界においても、その時代に見合った突き抜けられた方というのが、同じパーセンテージ存在するものではなかろうか……とも思うのでした。
大拙先生がご存命当時の老師方を、私は実際には存じませんのでわかりませんが……。
*写真は『相貌と風貌-鈴木大拙写真集』より