今週の花

1606070-1.jpg八重のどくだみを無文老師に御供えしました。

この花を見る度に思い出すのは、今は亡きとある骨董屋のご亭主です。

李朝に惹かれて美術館巡りなどをしていた若かりし頃、その日は骨董街をうろうろしていると、店先のウィンドウに素晴らしい李朝の大壺をみつけました。
今思えば一見さんお断りのようなお店だったろうと思うのですが、若いが故(23歳の頃)に何も恐れる事無く入ってゆき、大壺についてお話したところ、「若い人が李朝に関心がある事が嬉しい」と、色々お教えくださり、出羽桜美術館の李朝コレクションの図録と、日本人で一番最初に李朝の美を見出した浅川巧さんの生涯をえがいた『白磁の人』の単行本を下さったのでした。

それ以来、度々訪れては自慢のコレクションからお好きな食べ物の話に至るまで、様々のことをお教えいただき、何とも京都の骨董屋さんの日々の暮らしの奥深さや美意識とは、京都のそれそのものなのだなぁ…などと思ったものです。

160607-2.jpgある日遊びにゆくと自慢げに、「どくだみ言うても、普通のんと違って、八重のどくだみがあるのを知ってるか?」と、李朝の徳利に一輪生けられたこのどくだみを見て、なんとも可憐なその姿に見入ったのを思い出すのです。自宅のお庭に咲くと、店に持ってきて生けられているようでした。

花一輪が、そのまま亡き人の様々な懐かしい記憶へと繋がります。