小生の仕事部屋のクーラーが故障した。暑くてたまらない。山寺でも、日中は暑い。こういう時は、昼間からビールでも飲みたいところだが、仕事に支障をきたす。ガリガリ君にしておこう。
ところで、ある語録を読んでいて、興味深い言葉に出くわした。
「賜氷節(しひょうせつ)」という言葉である。「賜氷」は、頒氷(はんぴょう)とも言い、盛暑の時、天子が臣下に氷を頒(わか)ち賜(たま)うこと。『周礼』天官・凌人に「夏、氷を頒ちて事を掌(つかさど)る〔暑気盛ん、王、氷を以(もっ)て頒ち賜う〕」とある。中国では決められた日はないようだが、日本では6月1日が当てられたようだ。『翰林五鳳集』巻六十二に載る詩(作者不明)の前文に「六月一日、世伝えて以て賜氷の節と為す。蓋(けだ)し天官を擬すれば、所謂(いわゆ)る中夏頒氷なり」とある。
新暦で生きる現代人には、6月1日が盛夏とはピンとこないが、2ケ月足せばよく実感できる。旧暦(陰暦)では、1・2・3月が春、4・5・6月が夏、7・8・9月が秋、10・11・12月が冬である。有名な禅語「六月、松風を買わば、人間、恐らくは価(あたい)無からん(6月の清風には値段も付けられない)」の「六月」と同じで、6月は真夏なのである。体感を陰暦に合わせることが、漢詩や語録を読む場合の必須である。
話が脱線したが、宗門では、6月1日の半夏節(はんげせつ)を氷節と呼び、衆僧に氷や冷たいものを饗応していた叢林もあったらしい。「熱時熱殺(暑い時には暑さに徹する)」などと言うが、暑い時は暑いのである。
読者の皆さんも、あるいは部下にアイスクリームをおごったり、あるいは上司におねだりしてみてはどうですか。なにしろ、古い古い伝統なのですから。