こじんまりとしたこの美術館。
展示数も数えるほどだが、逸品ばかりが展示される為、大いに満足できる美術館として毎回の展示を楽しみにしている。
いつも展示品についての主題が楽しみなこの美術館。今回は-山笑ふ-(季語)。
桜に続き、青々とした若葉芽吹く山、まるで山が笑っているかのような・・・。この主題を聞いただけで、どんな展示か心が弾む。
いつもその季節の茶会・茶事を想定した展示で、会の流れのままにお道具を拝見し、一席楽しんだ後のように心満たされるのだ。
今回は、案内によると、「山ふところの別荘で、庭や借景の山々に咲ききそう花を愛でながら、大寄せの茶会を催すことを想定しての陳列です。 まず玄関から待合へ。 それから順次庭へおり、東家を中心に、酒肴をまじえつつ、春の風趣を堪能し、そうしてふたたび座敷へ。 戸外の桜を心に描きつつ、広間での薄茶を楽しんでいただく観桜茶会。 ただ、たとえ展示であっても、桜のように季節感を強烈に印象づけるものは、時候をすぎてしまいますと鑑賞に耐えられなくなってしまいます。 それはまた、あくまで茶道具であって鑑賞美術品ではないゆえんでもあります。 そのため、今回は「山笑ふ」と題し、4月後半には一部展示替えもすることになっています。」とのこと。
印象に残ったものとしては・・・。
○煙管 銘「比翼」…これは珍品。煙管の先は一つなのに対し、双方に管が伸び、二人で吸える煙管だ。比翼の鳥かぁなるほど。と思ったものの・・・。
○大黒釜に炉縁…春の野山を感じられる取り合わせ。大徳寺・大心義統の天衣無縫な字で箱書きがあり、それにもふと心癒される。炉縁は桜の木をたくみに使ったもの。
○蓮月尼の書…春の四阿(あずまや)に何とも春らしい風情を醸し出すあの字。待合や本席ではなく、四阿にて拝見するのが一興。
○志野水指…ありそうで、あまり拝見する事のない志野の水指。運び点前に向くような大きさの物だが、伊賀や信楽のものともまた違い、軽やかさもある。
○近衛信尹筆 百人一首…寛永の三筆では、光悦が趣味だったはずが、今回拝見したことによって、私の中での順位が入れ替わるやも・・・。しかし、光悦、近衛公、松花堂どれをとってもうなるほどに素敵なのだ。
書いていればきりがない、一つ一つが心から楽しい。箱書きも全て拝見できるのがまた嬉しい美術館なのだ。