先月、禅文化研究所の本年度サンガセミナー第2回で「傾聴講座―カウンセリング技法に学ぶ傾聴の本質と実際」と題して、花園大学学長の丹治先生に講義いただきました。主催者側ではありながら、興味を持って拝聴させていただきました。
以前、住職研修会にても「傾聴の基本」の講習を受けたのですが、その際に、非常に印象に残ったのは「ひたすら聴く」ということで、自らは話はしないということでした。しかし、僧侶として生きてきていると、どうも聴いているだけということに違和感を感じていたのでした。
しかし、今回の講座を聴いて、心理学の世界でいう「クライエント中心療法」という技法により、積極的傾聴ということがあることを知りました。
ここでは講座の内容を詳しく説明する事はしませんが、相手と同じ立場に立つことによって共感をしていくのが傾聴であり、学校や家庭などにおける教育という場合とは全く異なります。
講座を聴いている間に、では、宗門人である私たち僧侶は教育者の立場でいるべきなのか、傾聴者の立場でいるべきなのか、よくわからなくなってきたのです。お釈迦様や祖師の教えを元に、檀信徒の方々の前に立ってまがりなりにも説法しなければならない自分の立場もあります。そして、あるときは、一人訪ねてきたお悩みのある檀家さんに対して、傾聴者という立場をとらなければならない事もあります。
あるいは、自らも傾聴者に対してのクライアントになることもあることに気付きました。誰かに話を聞いて欲しいのですね。
説いて、説かれて、聴いて、聴かれて……。最終的には「自他不二」を実感した講座でありましたが、具体的な事例も教えて頂き、今まで以上に、傾聴者たるべきときは「相手の感情を思い図って共感をする」という大切な事を再認識するいい機会となりました。
受講者の方々からの感想もよく、もう少し実践的な事をしてみたいというご希望もありました。時間的なこともあり、今回はあまり実践をしてもらうことができませんでしたが、次回はそういったことも考慮して開講できればと思っています。
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