『ぼくがいま、死について思うこと』(椎名誠)

 

死について思うこと.jpg10年以上前に椎名誠(シーナ)さんの小説は、『岳物語』をはじめ片っ端から読んでいた時期がありました。息子を乗せてカヌーでツアーをするとか、大いに憧れてもいましたが、知らぬ間に久しく離れてしまっていました。そういえば、最近、シーナさんの本を書店でも見てなかったような気もしていたところ、この本の帯が眼に入ったので、思わず手にとったのでした。

ちょうど個人的にちょっともてあますほどの時間ができ、そして、改めて死について思う事もあり、この本を読みました。

帯の文言から、相当、重い内容なのだろうと思って読み進めましたが、じつはこの帯は適切じゃないというのが正直な感想です。帯を見て「へぇ、あの憧れだったシーナさんが死のうと思ったのか……」と思っていましたが、そのことについて触れられているのはほんの少し。この本でシーナさんが言いたいのはそんな事じゃないと思いました。

我々僧侶のように人の死に関わる方、ほかにも医者や葬儀屋さんにはもちろん勧めたい一冊ですが、家族や身内から死人を出さない、あるいは自分は死なないという自信のある方以外には是非お勧めしたいのです(もちろんそんな方はおられませんよね)。

一時期おおいに読まれたり話題に上がった『葬式無用論』などの本より、生死や葬儀を考えるには絶好の本だと思いました。身内や親友の死に臨んだときの気持ちなども赤裸々に書かれています。それからシーナさんや奥さん(チベットを長期にわたって旅をする驚くべき人)が、直に見た世界の辺境の地のお葬式の色々な仕方を知るだけでも、とても興味深い一冊だと思います。

この本を読んで、改めて自分自身の死生観を感じてほしいと思いました。もちろん、私自身にも多くの気づきがありました。

 

余談ですが、禅文化研究所からも『禅語に学ぶ 生き方。死に方。』(西村惠信著)という名著があります。よろしければあわせてどうぞ。