昨年末の除夜の鐘

 

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昨年末の師走の「中外日報」(仏教界の新聞)によりますと、除夜の鐘を迷惑と言われ、時間を深夜ではなく昼間に代えたり、防音壁を作って対処されたというようなお寺があり、また、一般のニュースでも同様の報道を見ておりました。いまや、除夜の鐘は一年を振り返る風物詩でさえもなくなってしまったのでしょうか。

反対に大きなお寺では、普段はお寺参りもしないでも、喜んで除夜の鐘を撞きに来られる方もおられるようで、108では終わらないとうれしい悲鳴をあげておられるご寺院もあるようですが、迷惑といわれる場合もあったりで、そういうお寺にとっては頭の痛いところでしょう。
幸い自坊には未だ苦情を寄せてくる方はおられませんが、うちのような田舎寺では、近年、だんだんと深夜の除夜の鐘にお参りされる方は減ってきてしまっており、寂しい限りでおりました。

そうしたところ、山口県のある臨済宗寺院のご住職が、「除夜の鐘撞き放題」として、大晦日には一日中、いつ鐘を撞いてもいいようにされていることをSNSで知りました。これは思い切った闊達なやり方だなと共感し、ではうちでもやってしまいましょうと、さっそくSNSで宣伝し、かつまた、寺の表と裏にある2ヶ所の掲示板に、上のような「大晦日終日鐘撞き放題」と貼りだしたのです。

2016-12-31-08.49.jpg檀家さんの多くは、大晦日にご先祖のお墓掃除に見える方が多いので、掃除の後に、一年の垢を落とすつもりで鐘を撞いて帰ってくださいねということなのです。時々、掲示に気がついて鐘を撞いて帰られる方もおられ、内外の掃除や正月の設えをしている私の耳にも、「ゴーン」という鐘の音が聞こえてきて、ニヤリとほくそ笑んでいた次第です。

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午後、見かけない青年男性二人がやってこられ、鐘楼を写真に撮っておられるので、「どうぞお気軽に撞いて帰って下さい」と声を掛けると、うれしそうに「では遠慮なく」とかなりの数を撞いて、お互いに写真を撮ったり楽しまれているご様子。

聞いてみるとSNSでの投稿を見て、おもしろそうなことをされているので訪ねてきましたと、県内ではあるものの、結構な距離を車で来て頂いていることがわかりました。去年はポケモンGO大流行で、見知らぬ方が来て、ポケモンをゲットしては、本堂に拝みもしないで出て行かれる光景をみましたので、それとこれでは大きな違い。とても愉快な気分にさせて頂きました。

ところで、このせいで撞きすぎたからではないですが、夕方、撞木のロープが1本切れてしまうという事態が発生。幸いにして、誰も怪我をしなくてよかったのですが、大急ぎで応急処置をして事なきを得ました。新年あけてから、4本とも新しいロープに交換したのは言うまでもありません。

うちの寺でこんなことをしたのを知って、また近隣のお寺でも同じように終日撞き放題にされていたお寺もあったようです。まだまだ宗門は捨てたもんではないですね。今年の年末もまた撞き放題やりたいと思います。