先日、ある懐かしい人から電話をもらった。
嬉しかったが、小生にかかってくる電話は、ただの挨拶ではないのが常である。
案の定、「臨済宗は、いつごろから対面で坐禅をするようになったんだ」という難問であった。
確かに坐禅の基本は、達磨面壁である。
ところが現在の臨済宗は、面壁ではなく、禅堂の内側に向かって坐禅をする。
曹洞宗は、壁に向かって坐る。
その懐かしい人は、現在放映中のNHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』で、雲水さんたちが、対面坐禅で撮影されていることを見て気になったらしい(ちなみにこのドラマの僧侶の演技指導をしておられるのは、臨済宗妙心寺派龍雲寺〔東京〕の細川晋輔和尚である)。
この問題は非常に難しいのだが、小生のわずかな知識を紹介しておく。
江戸期の臨済宗の学僧で妙心寺にも住した無著道忠(1653~1744)が撰した『小叢林略清規』には、
凡(およ)そ坐禅の法は応(まさ)に面壁すべし
と書かれている。
ここから小生の推論だが、無著道忠が、わざわざこう書くということは、既にこの時代あたりから、対面坐禅が行なわれていたと見るのべきだと思う。続いて無著道忠は、『百丈清規』に云(いわ)くとして、
坐堂は尋常(よのつね)の坐禅の如く、内に向かって坐す。鼓(く)鳴れば則ち身を転じて外に向かって坐す
と注記している。どうやら、日本近代の臨済宗の対面坐禅は、『百丈清規』の「内に向かって坐す」を採用し、次の「鼓鳴れば則ち身を転じて外に向かって坐す」を無視してしまったのではないのか。まあ、これが、小生の一推論である。
壁に向かって坐ろうが、内に向かって坐ろうが、坐禅には何の区別もないが、疑問に思われる人もおられるかと推論を述べてみた次第である。
1分でも数分でも、静かに坐ってみられたら、気持ちいいですよ。
自己発見です!