滋賀県日野町鎌掛にある正法寺(臨済宗妙心寺派)は、知る人ぞ知る藤の寺として有名です。訪れたのはゴールデンウイーク最終日の夕方。まさに閉門近き頃でした。檀家らしき方々が保存維持費用として200円を徴収されていましたが、おそらく、私が最後の訪問者であっただろうと思います。
夕陽がまだ高かったので、ゆっくりと藤を楽しむことができましたが、じつはまだ5分咲きぐらいでしょうか。それでも立派な藤棚にみごとな花が垂れ下がっていました。開山の普存禅師が元禄のころに京都の仙洞御所から移されたそうで、樹齢三百年とのことです。
本堂にも上がってみました。こちらのご本尊は通常非公開のようで、直接拝むことができなかったのですが、大きな十一面観音菩薩とのこと。
そして実はこのお寺、現妙心寺派管長の嶺興嶽老師の嗣法の師である、瑞雲軒松山萬密老師(妙心寺640世)が、徳源僧堂師家として上がられる前に住持されていたお寺なのです。本堂の中には、萬密老師のご親化の時のにこやかな写真が何枚も飾られていて、いかに、このお寺を大事に思われていたかが感じられます。
この本堂正面の扁額も、萬密老師の揮毫によるものです。
ほかに、山内には鎌倉時代(正和四年〔1315〕)の非常に美しい石造宝塔があり、滋賀県の重要文化財になっています。
キリシタン大名としても知られるかの蒲生氏郷が善政を敷いたこの蒲生の地。付近は、小高い山があちこちにあり、穏やかな土地柄の小さなお寺でした。
藤の花はまだ少しの間、愛でることができそうです。お訪ねになってみては?