蘇山玄喬禅師の禅画墨蹟

先般お知らせしたとおり、平成29年12月11日より、花園大学歴史博物館にて、企画展「蘇山玄喬-禅画と墨蹟」展を開催します。この展覧会では、名古屋・徳源寺、京都府八幡市円福寺、熊本市・見性寺という蘇山玄喬禅師が住した3寺院の所蔵品を一挙に公開するという展覧会です。

したがって、本展には出品されませんが、禅文化研究所でも3点、蘇山禅師の禅画を所蔵していますので、今回はその中の

蘇山玄喬自画賛「文殊菩薩図」(紙本墨画/94.9cm×29.6cm)

を紹介させて頂きます。

禅文化_014b_8A4A5701_L.jpg画像をクリックすると大きな画像が表示されますが、内容は下記の通りです。

(「不識」白文長方印)
常持常誦者
阿羅波者那
蘇山拜書(「蘇山」朱文円印)(「雲祥山主」白文方印)

ちなみに、仏菩薩図としては、今回の展覧会には「出山釈迦図」「水月観音図」「地蔵菩薩図」が出陳されますが、「文殊菩薩図」はありません。

落款に「雲祥山主」の印が使われていますので、まだ円福寺に入る前、見性寺の住職をされていたころに描かれたものということになります。また、円福寺住持を経て、徳源寺を開創された以後は款記も「特賜神機妙用禅師書」などと書かれているものが多いので、「蘇山拝書」とだけされる款記は若い頃のものに多く、この文殊菩薩図はまだ禅師が40~50歳代に書かれたのだということがわかります。

賛は「常に持し常に誦すは阿羅波者那」と読みます。文殊菩薩の常に持ち誦まれている経巻のことをあらわしています。「阿羅波者那」は通常「阿羅波遮那」と書かれますが、『般若経』に説かれる悉曇の四十二の文字の初めの五文字ですから『般若経』そのものを言っているのでしょう。文殊菩薩は釈迦に代わって般若の「空」を説かれる菩薩なのです。