浴梅

 

blog_MG_1732.jpg旧暦の偈頌や語録、漢詩ばかりを読んでいる小生は、正月を迎えて、気分は既に春なのですが、現実、新暦で生活している小生のもとには、いっこうに春はやって来ません。それどころか、テレビニュースでは、数年来の寒波襲来と、雪害の模様を流し続けています。

さてそこで、春を先取りしましょう。

「浴梅」という言葉を御存知でしょうか。これは、詩題の一つです。初めてこの言葉を見た時、小生は、梅の花びらを風呂に浮かべて、優雅に入浴するものだと思ってしまいました。ところが違うのです。

春の梅花を待ちきれないばかりに、まだ咲いていない梅の枝を折って来て、熱湯を入れた花瓶に挿し、無理矢理にも花を咲かせようとする、一種の風流なのです。

「出(い)でて寒梅を折り、帰って之れを浴す。暗香未だ度(わた)らず、春の遅きを覚ゆ」。

これは、五山文芸の大家、横川景三の「浴梅」詩です。

「寒梅を折って持ち帰り、湯の中に入れてみたが、花は咲かずに香りもしない、春の訪れは何と遅いものか」という意味ですが、熱湯に入れられる梅の枝も、可愛そうと言えば可愛そうです。

みなさんもやってみますか。小生の寺の境内は、寺観改革ということで、一本だけ植わっていた老梅が伐られてしまい、挑戦できません。浴梅開花に成功した人は、ぜひお知らせ下さい。
「浴梅」の真意からは離れますが、花屋さんから梅花を買って来て、浴槽に浮かべてみるのも、春の先取りかも知れません。