今年は明治時代の傑僧、釈宗演老師の100年遠諱の年であることは、何度もこのブログでも書いていますが、この年にまた、老師を顕彰するべく、岩波文庫から一冊の本が出ました。『禅海一瀾講話』(本体1560円+税)です。
宗演老師の今北洪川老師が著わされたのが『禅海一瀾』(漢文語録)で、その全文を綿密に講義されたのが『禅海一瀾講話』です。原書は大正7年に光融館が発刊したものですが、これをこのたび、円覚寺派管長の横田南嶺老師が解説を付され、禅文化研究所でもたびたびお世話になっている小川隆先生(駒澤大学教授)が、誤植の多い原書を丹念かつ厳密に校訂し、注釈を施されて復刊されたというわけです。
また、原書にはなかったフリガナも多く振られ、初学者にも読める本となっています。
講話の中には仏典外典からの言葉が数々飛び出し、釈宗演老師の博学が自ずと分かってきます。若くして円覚寺派管長となられたわけですから、これらの講義も非常に若々しく力強く感じ、横田老師の解説にもあるように、あたかも自分も宗演老師の講義の席に列しているような感覚さえ覚えます。
洪川老師によって、儒教と仏教の一致を説かれた『禅海一瀾』が、宗演老師の講義によって、さらにキリスト教まで含めた広い宗教観が語られています。
是非、お手にとっていただければ幸いです。