去る10月6日土曜日に、土佐を訪ねてきました。というのも、高知県立歴史民俗資料館で行なわれている特別展「吸江寺(ぎゅうこうじ)」の展観を観るため、そしてこの日の午後に行なわれる、吸江寺(兼務)住職・小林玄徹師の「吸江寺について」という講演を拝聴するためです。小林玄徹師は私と同じ道場で修行した同輩です。
吸江寺は高知市にある夢窓国師が開山の名刹で、県立の博物館(資料館)が一つのお寺の特別展を開催することは、珍しいとはいいませんが、実際にはあまり行なわれていないことでもあります。そしてこうやって、展観品の写真撮影がOK(一部不可)ということも珍しいですね。
小さな展示室ではありますが、吸江寺の宝物の数々、そして関係する逸品が展観されていました。吸江寺は、夢窓疎石の建立によるものですが、その後、五山文学の双璧として有名な義堂周信や絶海中津も住職をつとめ、当時の土佐の守護代であった長宗我部氏に護られてきました。また山内一豊の子(拾・ひろい)が湘南と名を変えて住職となったりして、土佐と大変深い関係がありました。明治時代に廃仏毀釈で一旦廃寺となったのですが、妙心寺から特命を受けた少林踏雲によって再興され、今日に到っています。
展示室内は多くの人がおいでになっていて、高知の人たちにとってなじみの深い吸江寺の歴史を知ることができ、展観に興味を向けられていました。また同じく講演会を聴きにこられた、愛媛の大乗僧堂の河野徹山老師ともお出逢いしました。
右端の小さな木造は、夢窓国師自らが水鏡に写して彫刻されたという夢窓国師木像です。
午後2時より2時間にわたる小林住職の講演を拝聴しました。プロジェクターで画像を出しながらのお話で、夢窓国師の足跡や知らなかった吸江寺の歴史を詳しく紐解いていただきました。130名の定員で満席。直前のお申し込みには、残念ながらお断りされていたほどの盛況です。
吸江寺はその上に竹林寺という文殊菩薩を護るお寺がある五台山という山の中腹にあります。まさしく中国の五台山を模したものかと思われますが、その地名がいつ名付けられたかは不明としながら、おそらく夢窓国師ではないかと想像します。
吸江寺の目の前には湾がありますが、こちらも今は干拓されたりして少々狭くなってはいますが、それ以前の古地図を見せて貰えたり、またそこに書かれている吸江寺の建物なども知ることができました。
この展覧会についてお知らせしておきます。
企画展「開創700年記念 吸江寺」
会期:2019/10/4(金)~12/1(日) 9~17時 会期中無休
観覧料:大人(18歳以上)700円
主催:高知県立歴史民俗資料館(公益財団法人 高知県文化財団)
なお、11月3日(日)14~16時に「吸江寺と禅僧の文芸」と題して、中村健史氏(神戸学院大学准教授)の講演があります。こちらも先着130名で要予約となっています。あわせてお出でになっては如何でしょうか。
高知駅前には高知出身の英雄、武市半平太、坂本龍馬、中岡慎太郎の三方の銅像が立っています。秋の夕暮れにライトアップされ、勇ましいことでした。