お盆にお墓参りに行ってきた。新しい霊園には「翔」「夢」など、思い思いの文字が書かれた墓石もかなり増えてきたが、実家の墓地は村の共同墓地で、「先祖代々之墓」「〇〇家之墓」などと彫られた角柱形のものが主流である。
これらの墓は、彫ってある文字が示すとおり家の墓であって個人の墓ではない。日本は「イエ社会」だといわれるから、このような形態の墓が伝統だと思うのが普通であろう。
しかし、貴族や武士ならともかく、庶民までイエ制度が普及するのはそんなに古いことではない。だから「先祖代々之墓」と刻まれた墓石も、そんなに古いものではないそうだ。
墓石を詳細に調査した研究によると、現在見つかっている最古の先祖代々墓は寛政四年(1792)のものだそうである。広く庶民にまで先祖代々墓が一般化するのは20世紀に入ってからとのことという。(岩田重則『「お墓」の誕生』岩波文庫)
それ以前の墓石はどうであったかというと、位牌のように個人あるいは夫婦の戒名を刻んだ個人墓が普通であったらしい。古くさかのぼったほうが「個人主義」とはおもしろい。
石塔一つからでも、いろいろなことを読み取ることができるものである。