当研究所には、寄贈を受けたり購入したりした蔵書が相当数ある。近代以降の洋装本が主であるが、江戸時代を中心とする和装本もかなりの量にのぼる。
江戸時代の出版物は、当時の物価から考えても、かなり高価なものだったようだ。それにもかかわらず、さまざまな書物の出版がなされ、需要もあったことを考えると、江戸時代の文化水準ははなはだ高かったと感じざるを得ない。
明治以降あまり顧みられることのなくなった文献も、江戸時代の人はその価値を見抜き、苦労して出版した。そして実に丹念に読んでいる。
それは、行間の書き込みなどからもうかがえる。昔の学者の解釈には、現在の研究水準から見ても全く遜色ないものも多々ある。
仕事上、これらの和装本のお世話になることが多い。江戸時代の出版者や学者の恩恵を肌身で感じる毎日である。