主に茶道史の研究で知られる、熊倉功夫先生が館長になられたという事で知ったこの美術館。
岡山を訪れた際にお邪魔してみた。
美術館の名称からも察する事ができるように、このような私設の美術館が私は好きだ。
創設者の審美眼に耐えうる物のみが集められており、様々な分野の物の逸品を見られる上に、こじんまりした美術館が多く、ちょうどお腹がいっぱいになる展示数で疲れない。
ちなみにこの林原氏というのは岡山の実業家で、刀剣をはじめとする東洋古美術の収集家。岡山だけに、池田家旧蔵のコレクションも多いようである。
今回の展示は、「うるしの華」。>10月14日(日)まで開催中。
館内に入ってまず目を奪われたのは、葵の御紋が入った見事な婚礼調度品の数々。漆塗りのあらゆる技法を施し、おそらく現在の技術ではなかなか難しいのではないかと思える良い仕事の逸品ばかり。
それもそのはず。本多忠刻と千姫(徳川家康の孫・豊臣秀頼に嫁いだが、夏の陣の後救出され、本多家に嫁いだ)の娘である勝姫が、将軍秀忠の養女として、岡山の池田光政に嫁いだ時の品なのである。最近、司馬遼の本を改めていろいろと読んでいるが、歴史を知っているとさらに楽しめるものだ。
その他彫漆、螺鈿、かんざしの名品も数多く展示されていた。
四季折々の日本の風情を写したかんざしの細やかな技法には、目をみはるばかり。
この美術館では、月見や茶会などの催し物もあり、近場であれば通いたい楽しい美術館である。
茶会ではなんと熊倉先生が亭主をされるという。きっと楽しいお話が伺えるのだろう。
実は美術館に入った時に、まさかと思うが熊倉先生のお声が聞こえてきたのだが、お姿は拝見できなかった。
「館長さんだけれど、よく京都でもおみかけするし、まさか今日の今日、ここにいらっしゃるなんて・・・」と思っていたが、案の定、館内を見た後ロビーに出ると、ソファに腰かけてどなたかとお話し中ではないか。
温和な表情と柔らかいお声、わかりやすいお話で、時々講演会に出かけたり、茶道に関する本を拝読させていただいている熊倉先生ファンの私は、お声をかけたい衝動を何とか抑えつつ美術館を後にした。