京都、岡崎にある細見美術館の茶室-古香庵-では、年に何度か茶会が催される。
今回(9/29)は「観月のとりあわせ」茶会にお邪魔した。
会記はつぎのとおり。
床 簾に秋月図 渡辺始興筆
脇 秋草虫蒔絵小箱
花 季のもの
花入 亀甲文瓶子
香合 金銅透瓜形
風炉先 秋草図 酒井鶯蒲・鈴木鶏邨筆
釜 古芦屋葦達磨
風炉 面取唐銅 香取秀真造
水指 河南
薄器 秋草蒔絵平
茶杓 鵬雲斎大宗匠作 銘 秋の声
茶碗 黒 銘 川辺 二百之内 左入造
替 紅葉呉器
替 黒釉平 銘 仲麻呂
蓋置 古瀬戸一閑人
建水 砂張
菓子 月波
美術館に埋もらせておく(という表現はおかしいかもしれないが、、、)だけ、ガラスケースの向こう側を見て楽しむだけではなく、使える物は使って慈しむ、「使ってこそ」の喜び、楽しさを味わえる贅沢な道具の取り合わせ。
いつもこの美術館のこころみに感謝し、美術品に対する美術館の姿勢を伺い知る事の出来る良い機会なのだ。私設の美術館だからこそ、というところもあるだろう。
観月のとりあわせという事で、お軸には月が・・・。村田珠光の「月も雲間のなきは嫌にて候」を思わせる。満月が半分簾に隠れている絵なのだ。如何にも日本人の心をくすぐる感じ。
また、会記を見れば、どれも逸品であることはすぐにわかるが、今回私が出会えて一番嬉しかったのは、樂左入(千家十職・樂家6代)の黒樂茶碗である。左入は樂家に養子に入った人であるが、私はこの人のてらいの無い、その人柄を映し出すような茶碗が大好きなのだ。
この黒樂、如心斎(表千家7代)銘「川辺」は、小ぶりで薄づくりながらも、中をのぞきこむと宇宙のひろがりを思わせるような大きさを感じる茶碗で、外側から拝見しているのと、中を拝見するのとでは印象が異なった。
四客からの茶碗も、加藤清允先生によるもので、あれやこれやと楽しすぎて忙しいほど。
どのお道具にも人の人生のように様々な歴史があり、亭主をされる細見館長がいろいろなお話をして下さるのがまた楽しく、勉強になる。是非また機会があれば参加したい。
さて、茶会の後は美術館を堪能。現在の展観は、淋派展X「神坂雪佳-京淋派ルネサンス-」。
淋派の絵は、その初期のものでも、近現代のものでもそうであるが、どれだけ時代を経てもなお新鮮な印象を覚えるものである。何百年後でもその印象は変わらないのではないだろうか。
皆様も是非、芸術の秋、京都におでかけ下さい。
茶室から見える東山。岡崎あたりも、電線を地中に埋める工事をしてくれないだろうか・・・。
にしても、屋上にある茶室から東山を借景とはなんともにくいばかりの趣向だ。
ちなみにこの茶室、かの有名な中村外二氏によるものだ。
細見美術館全景。屋上に茶室がある。
茶会の際でなくても、普段は茶室にて御抹茶を頂き、休憩する事もできる。