万作・狂言十八選 -出雲-

出雲大社の大きなしめ縄

実は今回の出雲行のタイミングとピッタリ日程があったので楽しみにしているイベントがあった。
狂言師・野村万作さんの「狂言十八選」第三回が、出雲大社にて奉納される講演があったのだ。
まずは出雲大社に参拝。

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さて、出雲大社といえば、日本武尊で名高い、伊勢神宮に並ぶ大社(おおやしろ)である。この勇壮な神社で、かの万作さん万斎さんの狂言が見られるということで、早くからチケットを押さえていた。東京から飛行機やバスを利用してくるツアーもあるほどである。
演題は「三番叟」「棒縛り」「福の神」の3つだった。
今回の狂言の中では、気軽に笑って楽しめる狂言という意味では「棒縛り(ぼうしばり)」だけである。おなじみの太郎冠者と次郎冠者が出てきて、二人が主人に内緒で酒を呑むものだから、両手を棒や綱で縛られたのにも関わらず工夫して酒宴をしてしまうというコメディ。万斎さんが太郎冠者役だった。

結界の張られた舞台

他の二つはいわゆる狂言とは、少々趣きが異なる。
「三番叟(さんばそう)」は、能の「翁(おきな)」のなかで、狂言師が舞われる一部分であるだけで、いわゆる狂言のコミカル的要素は一切なく、非常に格式高いものであった。そもそも神様に奉納する舞いである。能楽堂ではなく、写真のように結界の張られた神聖な舞台での舞い、そして鈴を振りながら踊る万作さんは、さすがに重要無形文化財(人間国宝)の方であった。
さてさらに、ご存じのことかと思うが、狂言というのは、いつどこでという設定が曖昧なのが通常である。ところが「福の神(ふくのかみ)」は、この出雲大社が舞台となった狂言である。大晦日に出雲大社へ参詣する信仰の厚い2人に,祭神の福の神が現われるというものである。この場所でというのは誠にすばらしいの言葉につきる。すわ本当の福の神が現われはしないかと思えてしまうほどであった。