私が住む丹波地方は両墓制がある地域である。両墓制とは、埋め墓(埋葬地)と詣り墓(建碑地)が別々にある墓制である。埋め墓には遺骸が葬られるが石塔を建てない。詣り墓は遺骸の埋葬がなく、石塔を建てる。遺骸を埋める所と霊を祀る所とを別にする習俗が、両墓制なのである。しかし、火葬が取り入れられてからは、埋め墓にも石塔を建てるようになり、かつての習俗を失いつつある。
私の地域では詣り墓のことを「ラントウ」と呼んでいる。ラントウという呼称は僧侶の墓塔である卵塔を想像するが、歴住塔のある寺の墓地に隣接して詣り墓があるためにそう呼ばれてきたのかもしれない。
さて、ラントウでは、お盆の前に「タチマイリ」という各家の墓に僧侶が読経を行う行事がある。お盆には、精霊を迎えるが、ラントウはオショライさんが一時待機する所と考えられており、先祖の霊はあの世からラントウまで戻り、タチマイリをして家に迎えられるのである。
私の寺の場合、ラントウが4箇所あり、それぞれ決められた日の午前中にタチマイリが行なわれる。この日は親族も集まり、お参りの後には昼食を共にしたりもする。お墓で迎えるお盆のようなものである。お盆の期間中も親族が集まる機会が少なくなってきた時代の中、こうした習俗はこれからも続いてもらいたいものだ。
ところで、タチマイリでは洗米とナスを細かく刻んだものを蓮の葉に包み墓に供えられる。そのまま天日にさらされると干し飯となり、これはお盆に帰ってくる先祖さんへのお弁当とされる。こんな所にも先祖に対する古人の心遣いが伺える。
(K.N Wrote)