11月23日(金)~11月25日(日)まで、京町家「聚秀軒」にて、秋の特別一般公開「第5回都伝統工芸の会-京町家で見る京の伝統産業-」と題する、都伝統工芸の会による特別実演が行われた。
この催しは、「京のみやこで古くから伝えられて受け継がれてきた『伝統産業』を多方面に紹介」するために、それらに携る職人さん方によって行われているもので、錺職〔錺屋 松田潔祀〕、京仏師〔村上湛雲〕、京表具〔矢口浩悦庵〕、そして組織(くみおり)〔綵巧〕など、和の建築や装いに彩りを添える逸品の数々を鑑賞しながら、それらを受け継ぐ方々の実演や説明がなされる、というなんとも贅沢な試みである。
都伝統工芸の会は、京の伝統産業に携る方々によって、平成15年に設立され、今出川特別名宝展との共催事業によって、毎年各寺院会場にて「今出川社寺工芸展」が行われているので、ご存知の方も多いと思われる。
会場となっている町家、聚秀軒には、京町家ならではの味わいがあるのみならず、床には若冲の海老図などがさりげなく掛けられ、そこに、これらの伝統工芸が一堂に会してそれぞれの主張をしながらも調和しているという、非常に興味深い空間であり、いつまで居ても飽きることはない。
その中でも、今回、特に圧巻だったのは、菅原さんの三軸組織(さんじくくみおり)の手織りによる正絹の段通で、まだ未完成とのことであるが、斜めに交差して表現される三軸組織特有の風合いのみならず、体重をかける度に聞かれる絹鳴りの音色が耳に心地よく、たいへん素晴らしいものであった。
ちなみに、この「聚秀軒」とは、相国寺の有馬管長猊下の命名なのであるが、名前通りの素晴らしい空間であり、催しであったと言えよう。
伝統産業に携わる人の数は、年々減少傾向にあるという。このような機会をきっかけに、素晴らしき伝統工芸品の数々が、少しでも後世に伝わっていくことを切に希うものである。
※なお、写真につきましては、都伝統工芸会様の許可のもと、聚秀軒WEBサイトより転載しております。