禅僧のことば -黄檗宗 萬福寺管長-

東方丈_萬福寺

晩秋の終わりが近づいた一日、宇治市にある黄檗山萬福寺を訪れた。京都市内の紅葉で名高い寺院は、この時期は朝早くから参拝者で賑わっているが、ここ萬福寺はそれほどではなく、早朝の凛とした空気が心地よい。
切妻造りの総門から境内に入ると、三門、天王殿、大雄宝殿と中国風の伽藍が建ち並び異国情緒に溢れている。天王殿には弥勒菩薩の化身とされる布袋和尚が中央に祀ってあり、でっぷりとした腹を突き出した姿は仏像とはいえ実に微笑ましい。茶室有聲軒近くにある黄檗の木は山号の由来となった樹木であるが、病気のためか幹の途中から切り取られ、今は僅かな枝を残すのみである。
さて、今回の訪問の目的は、以前にもお伝えした臨済宗黄檗宗の各派管長に出演いただくビデオの収録のためで、初回は仙石泰山黄檗宗管長である。撮影には境内奥にある東方丈を使用させていただいたが、庭の紅葉は今が見頃で白砂とのコントラストが美しい。

黄檗宗管長

山号の由来となった木

10時から始まった収録は、インタビュアーの質問にお答えいただく形式で進み、生い立ちや出家の動機、修行時代の思い出などと共に、年間3万人を超える自殺の問題や若者に伝えたいこと、さらに人が生きていく上で一番大切にしなければならないことなどを、2時間にわたって語っていただいた。
戦中を生き抜き、長い修行生活を経て、今なお多くの若い修行僧を指導されている老師ならでは言葉には実に重みがあるのだが、質問のたびに、「私は大したことをしてこなかったから……」と微笑みながら仰る姿が印象的であった。

撮影風景

*各派管長、老師との対談は、来春にDVDにて禅文化研究所より発売予定です。
前回のブログ記事-禅僧のことば-はこちらからどうぞ。