雪舟等楊が備前宝福寺の小僧さんであった頃、和尚さんに叱られて本堂の柱に括りつけられたとき、涙で描いたネズミの絵があまりにもリアルであったので、和尚さん思わず「しっ、しっ」と追い払ったという話がありましたね。
私は子供の頃、お寝便して本堂床下の道具部屋に閉じ込められたとき、ふとこの話を思い出して真似してやろうとしたのですが、涙も枯れ果ててさっぱり絵にならなかったのです。そのうち師匠が心配して本堂にやってきて、扉の外から呼びかけたのですが、私はジッと黙って無言の抵抗をし続けました。すると和尚は驚いて鍵を外し扉を開こうとしたので、私は素早く飛んで出て難を逃れました。
あれからすでに七十年、そしてふとあの時描きたかったネズミの絵を今描いてみようと思ってこんなのを描いてみたのですが、さあ私の創作「窮鼠猫を噛む」、はたして師匠を驚かせ得たかどうか。どうぞ皆さん今年もひとつ、こんな気魄で一年を過ごしませんか。
所長 西村惠信