茶の湯 -相国寺派 有馬頼底管長-

濃茶点前をされる管長

DVD撮影の一環として、この日は相国寺派、有馬頼底管長の茶の湯のお点前を撮影させていただいた。
撮影カメラがあろうとも、何ら気にされることもなく、淡々と濃茶点前をされる有馬管長。
午後からは初釜があるとのことで、お正月らしい道具組に新春の訪れを感じ、また管長のお点前を近くで拝見させていただける事に嬉々としつつ……。
茶碗にはかれたお茶に管長が湯をそそがれると、茶室いっぱいに何とも言えない茶の香りが。
湯あいもちょうど良いようで、松風が耳に心地良い。
床を拝見すると、浙翁如逅ー筆「水僊(すいせん)」の字。春の訪れをいち早く告げるその花のけなげな愛らしさを思い浮かべる。
何畳かの、決して広い空間とは言えない茶室にでも、五感をフルに働かされるほどの色々がつまっており、それを感じる喜びも、茶の湯の楽しみである。また、改めて季節ごとの恵みを感じる事で日頃への感謝の気持ちも自然と湧いてくる。
しばし仕事である事を忘れ、至福の時を過ごさせていただいた。
と、濃茶が練り上がり、「せっかくやし、あんたら飲みぃ」と管長のお言葉。
ありがたく頂戴すると、口いっぱいにとろりとした心地よい甘みが拡がるのと同時に、少しの渋みが意識を覚醒させ、背筋が伸びる心地がした。

本席の軸

濃茶茶碗と服紗 天正時代の釜

上司と何気なくいただいたその濃茶のお茶碗は、保存状態が非常に良い李朝の堅手で、銘を「曙」。
服紗は、足利義満公の袈裟に使われた裂地を、義満公600年遠諱記念に復元して作られたもの。
茶入れは非常に珍しい、中国は元の時代の釉裏紅の小壺を茶入れに見立てたもの。
茶杓は管長のお話によると、千道安(千利休の長男)の物らしく、おそらく日本でも数えるほどしか現存しない道安の茶杓のうちの1つではなかろうか。銘は「雪の朝」で、本当にこの日は雪の朝となったのだ。
全てのお道具を詳しく説明…といきたいところであるが、本末転倒になるのでこのあたりで…。
なんにせよ、DVDの発売を楽しみにしていただきたい。

茶入れ 釉裏紅 薄茶器 近左作鳳凰蒔絵大棗