幼なじみに強く薦められて、新谷弘美著『病気にならない生き方』(サンマーク出版、2005)を読んだ。
母を膵臓ガンで亡くしたとき、木をみてまったく森をみない現代医療に対して強烈な不信感を抱いてしまった私は、この書の著者が、大腸内視鏡によるポリープ切除を世界で初めて手掛けた権威ということで、読む前からちょっと引いていた。
昏睡状態ですべてを受け付けなくなっていた母の腕には最後まで点滴注射が打ち続けられ、腕は二倍もの太さに腫れ上がっていた。「どうしてこんな無意味な点滴を続けるのか」と詰め寄った私に、ある意味誠実だった主治医が「これが現代の最善の医療なのです」と言ったのであった。
新谷(しんや)先生は9万件以上のポリープ切除を行なってきたが、40年に亘って一度も「死亡診断書」を書いたことがないという。大腸ガンなどのシリアスなケースを多く手掛けながら、「ガンの再発率ゼロ」という結果を出してきたからのようだ。
本書は、「何を食べて、どんなふうに生活するか」を具体的に示すことによって、「病気にならない生き方」「病気を再発させない生き方」を説いたものである。しかし、「健康オタク」系の本ではまったくない。40年を越す臨床医としての経験からくる信念と「だれもがよりよく生きてほしい」という祈りが随処に感じられるのである。
「私はガンをもっている人に会うと、体の中を見なくてもそのことがわかります。なぜなら、うまく言葉では説明できないのですが、自分の「気」がサーッと吸い取られるような感じを受けるからです。私がこういう話をすると、ドクターの多くは苦笑します。でも、これはたんなる「カン」ではなく、私の膨大な臨床経験に裏打ちされた「直感」なのだと思います」
と先生は書く。不幸にして今、病をえているなら、そして主治医を選べるのなら、苦笑をするドクターより、新谷先生にお願いしたいと私は心から思う。そんな本であった。
因みに先生が切り捨てる「流行の健康法」には以下のようなものがあって、ちょっと「目から鱗」であった。
・腸のために毎日ヨーグルトを食べるようにしている
・カルシウム不足にならないよう、毎日牛乳を飲んでいる
・果物は太りやすいので控え、ビタミンはサプリメントでとるようにしている
・太りすぎないよう、ごはんやパンなど炭水化物はなるべく控えるようにしている
・高タンパク低カロリーの食事を心がけている
・水分はカテキンの豊富な日本茶でとるようにしている
・水道水は残留塩素を抜くために、必ず一度沸騰させてから飲んでいる