佐川美術館 樂吉左衛門館開館記念フォーラムが、去る2月2日に京都市の金剛能楽堂にて行なわれました。
題して、「現代(いま)の精神(こころ)を語る-茶碗から空間へ-」。
樂家当代(15代目)の樂吉左衛門氏の設計により佐川美術館に新しくできた茶室は、ごく当たり前の、今まで私たちが知っている茶室とは異なる様相を呈している事は既に耳にしていました。
なんとなく、「樂さんの今風のあの樂茶碗に合う茶室なのかもなぁ…樂さんらしいなぁ」と、写真やらを拝見して思っていましたが、やはりそのようで、樂さんは自分の茶碗が生きる茶室というものがあれば…とずっと思われていたそうです。そして、佐川美術館には守破離(しゅはり:「規矩作法、守りつくして 破るとも 離るるとても 本をわするな」・千利休)をコンセプトとした樂吉左衛門館と茶室が作られました。
長年の夢がついに叶ったともいうべき茶室について、まずは伝統的建築の権威・中村昌生先生(京都工芸繊維大学名誉教授)の基調講演がありました。
スライドを見つつ、冗談を交えつつ、樂さんの茶室がどういった精神を宿しているのか、非常にわかりやすく、愛情こもった賛辞を樂さんに送っていらっしゃるように見受けられました。
素人がぱっと見たところでは、新しい以外の何ものでも無いように見える茶室にも、中村先生の頭の中にある膨大な知識や資料によれば、やはり伝統的な流れを無視しているわけではない、筋がちゃんと通っているのだという事を理解できました。
中村先生による基調講演のあとは、樂さんと、京都大学副学長の横山俊夫先生との対談。
これがまた、その場にいた方にしかわからない面白さで…。横山先生のファンにもなってしまいました。
樂さんによれば、この茶室は、「私が私であるという小さな存在が、もう少し大きな何かの中に包まれる感じ、いわば赤ちゃんが羊水の中にいてしっかりとその個が受け止められている感じ」と、とてもおもしろい表現をされていました。
私は、この茶室は、「無一物中無尽蔵」を体感できるような場所になっているのでは?!と、今回のフォーラム全編を通して感じました。
さて、この茶室、一般にも見学可能です。ただし、予約が必要となっているようですので、詳しくは佐川美術館まで…。
私も必ず訪れて、自分で感じたいと思っています。
横山先生によれば、茶室などの見学を全て終えた時、自分の身体全体が鋭い感覚体になっているように感じたとか…。楽しみです。