さて、2回に亘ってわたしが号をつけた陶工の話をお伝えしたその彼が、今、一所懸命に何を作っているかといえば、なんと、“骨壺”である。
「陶工に号をつける」
*その1 *その2
彼は、商工会議所の青年部会に入っている。陶工とはいえ、やはり俗世間のつながりは無視できず、なかば、強制的に入会させられた。商工会議所であるから、多種多様の職業の人がいる。そこに、石材店と葬祭店とがいた。彼等も生き残りで必死である。いろんな知恵をしぼる。そこで浮かんだのが、生前に自分だけの“骨壺”を持っていただくという案である。「この壺にわたしは入るのね……」と、生前は飾っておける“骨壺”である。売るのは葬祭店である。その骨壺を売っておけば、買った人は、必ずその葬祭店を利用する。もちろん買った人の遺族ではあるが。そして、その葬祭店と提携している石材店は墓石が売れる。「これは名案だ」ということで、話が、青年陶工のもとへ行った。彼も「それは面白いかも知れませんね」と承諾した。そして今、形だの図柄だのを研究している。
世の中は変わったものである。骨壺といえば、円筒形で乳白色に決まっていた。どうですか、このブログを読んでいる方、生前に自分だけの“骨壺”を持ってみたいと思いますか。青年陶工の経済を考えると、この“生前骨壺”作戦がうまくいけばよいなとも思うが、坊主の立場からは、骨壺がドンドン売れるというのも…… 考えさせられるところではある。